インタビュー

THA BLUE HERB(3)

掲載: 2002年06月06日 12:00

更新: 2003年03月03日 21:18

人を感動させないと意味ないじゃん

 新作に収録された“路上”で繰り広げられるドラマ、それはタフで厳しい、実に〈ヒップホップ〉らしい世界観だ。

「それがないと意味ないしさ。ちょっとハスリングな感じを混ぜて……。『SELL OUR SOUL』12曲、『FRONT ACT CD』3曲、トータル15曲でひとつのプロジェクトなのさ。俺ら曲順のとおりに作ってるのよ。どんどん突き詰めていって、そしたら“路上”みたいなところに出くわして、“S.S.B.”と“I'm Private Army”で混沌の極地に落ちて、でもアルバムが終わるまでには、9のネガティヴィティーのなかから1のポジティヴィティーを見せるみたいな」(BOSS THE MC)。

 タイでO.N.Oとの再会を果たし、そこからBOSS THE MCの旅がはじまる。“3 Days Jump”からはタイの、“路上”からはネパールの風景が見て取れる。

「どこの国に行っても俺は俺だから……」(BOSS THE MC)。

 〈通りすがりの旅人〉は、旅の間もリリックを書き続けた。

「後付けの音楽だから、俺らの音楽は。“時代は変わる”って言って、本当に時代が変わったから、あの曲が意味を持つわけさ」(BOSS THE MC)。

 地方から音を発信すること、東京中心のシーンのあり方を、音の力でひっくり返したこと。みずから言うところの「絶叫寸前の綱渡り」を続ける彼らは、それを体現してみせた。時代は変えられるということ、私たちはそれがわかった。それは本当に大きな出会いだった。

 BOSS THE MCの握手は力強い。そこには、彼の言葉以上の気持ちが込められているような気がしてならない。THA BLUE HERBのメッセージはいつでもストレートだ。正直で、裏表がない。だが、それ以上に私たちの感情を揺さぶり、心を掴んで離さないものが、ここにはある。

「ヒップホップのメタファーを大事にしてるんだけど、アルバムの後半になるとだんだんそういうのが削げ落ちてさ。本当に1対1っちゅうか、人間対人間みたいなところにまで持っていかなくちゃダメだと思って。じゃねぇと、人は感動しねぇし、俺らのデカい口も証明できねぇっちゅうか。ただギャーギャー言ってるだけになっちゃうからさ。だから、そこには陥んねぇようにって、すげぇ注意した。音楽やってる以上はさ、人を感動させないと意味ないじゃん。人が聴いた後にさ、何か残んないと意味ないじゃん。聴く前と聴いた後に、なにか増えてないと意味ないじゃん。そう考えたら、人間と人間っていう部分以外ないよね。そう思った」(BOSS THE MC)。

〈パーティはそのままで/もっとあったまって/酔いどれた/涙で生きた今日を/みんな笑え〉(“Smile With Tears”より)。

「もうメタメタに打ちまくってさ、とてつもなく深いところまで落としてもさ、俺らの音楽には最後に一瞬あるから、引き寄せるところが。最後は抱きしめるところがあると思ってるから。俺は付いて来てくれると信じてるから」。(BOSS THE MC)

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ソース: 『bounce』 232号(2002/5/25)

文/加藤 由紀