「自分内ブーム」を超えた新世界へ──コーネリアス
以前は生活の中で音楽が常に鳴っている状態だった。
いまは鳴ってないときがあって、鳴ってるときがある、という感じになってきた。
オリジナルアルバムとしては通算で4枚目、実に4年ぶりになるコーネリアスのアルバム『Point』がリリースされた。
その印象を端的に表現するなら、厳選された素材を使って無駄なく組み上げられた、家具のような音楽、といったものであった。前作『ファンタズマ』において既に見られた傾向ではあるが、その音楽は従来的なポップスのフォーマットを逸脱し、音のファブリックそのものや、その配置によって生れる空間を体験させる方向へと歩を進めていた。素材は日常的なリアリティの中から選ばれているのだが、目の前に広がるのは、これまでになく「たおやかさ」を感じさせる繊細で美しい新世界だ。
この音楽に、もはやかつての小山田作品のようなリファレンス(参考文献)・リストを付けることは難しい。が、あえて挙げるならカエターノ・ヴェローゾの名前は唐突だろうか。音楽的にカエターノのスタイルを模倣しているという意味ではないのだが、音に対する感受性という意味で、ある種のブラジル音楽を思い出させるところがある。
詮索しても切りがない。とにかく本人に訊いてみよう。コーネリアスに会ってきた。