インタビュー

「自分内ブーム」を超えた新世界へ──コーネリアス(4)

以前は自分内ブームに結びついたものを作っていた。いまはそういうことがあまりなくなった


 ──実際に「Brazil」ってスタンダード・ナンバーが入ってるせいもあるんでしょうけど、どこかしらブラジルの音楽を連想させるところもあったと思うんですが。

 「Brazil」は、ホンダの2001年の正月のCMでロボットの「ASIMO」が出るやつがあったんですが、その音楽を頼まれて、「この曲をアレンジしてくれ」って言われて作ったんです。それが面白かったから、今回フルサイズで作ってみた。

──ブラジル音楽はお好きなんですよね?

 ブラジル音楽は前から好きだったんだけど、この「Blazil」を作ったときはブラジル音楽が自分の中で盛り上がっていたってわけでもないんですよ。この歌はノスタルジックな歌というか「昔のブラジルに帰りたい」という内容らしいんですけど、2001年にロボットが「昔のブラジルに帰りたい」って歌うっていうのが面白い。
 CMを作った人がこの曲を選んだのは、映画『未来世紀ブラジル』の中で印象的に使われてたからだと思うんです。あの映画では文明社会に対するアンチテーゼっていうような意味合いでこの曲を使ってたと思うんだけど、実際にロボットを作ってる企業がそんな曲を使うのが面白いなーと。

──そうでしたか。今回のアルバム全体が、とくにアコギの音を聴いてるとカエターノ・ヴェローゾなんかのニュアンスに近いような気がしたもんですから。

 カエターノっぽい感じっていうのはなんとなくわかります。ブラジル音楽ってアコギでリズムを作ってる曲とかあるじゃないですか。ボディの音とか弦のタッチの音で。そういう部分は割と近いのかもしれないですね。

──でも、とくにブラジル・テイストを入れようというような考えはなかったと。

 そうですね。『ファンタズマ』の頃までは自分の中のブームみたいなのがあって、そういうものと結びついたものを作ってた感じがあったんですけど、今回はそういうのがあんまりなかったかも知れない。

──若いときはいつも自分のヒーロー的な人がいて、その人に自分を重ねたりするでしょう。いま、コーネリアスにとってのそういう存在はいますか。

 そういうのはだんだんなくなってきてる感じがするかな。ふつうに今でも好きな人はいるけど、若い頃みたいに憧れに近い感覚で「この人が好きだ」って言える無邪気さはなくなってきてるのかもね。

──その意味では、『Point』は、これまでよりも「素」の自分が表れてるって言えるんじゃありません?

 僕、すごいレコードとか好きで(笑)、前はバカみたいに買ってたんだけど、そういう感じはあんまりなくなってきたかも知れない。
 前は音楽が常に鳴っている状態だったんだけど、今は鳴ってない時があって鳴ってるときがある、という感じになってきた。

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2002年06月27日 18:00

更新: 2003年03月07日 19:31

文/川崎 和哉