インタビュー

「自分内ブーム」を超えた新世界へ──コーネリアス(5)

「子供のための曲を作ろう」とは考えなかったけど、でも子供が生れたことの影響は受けてると思う

 ──そういう生活環境みたいなものとか、余裕のあるレコーディング環境といったことが、今回の音に反映してると思います?

 その時の環境とか気分は音に影響してくると思いますよ。体調とかも関係してくるし。これを作ってるときもぜんぶがリラックスして調子よかったわけでもないし、普通に暮らしててもテンパってる感じのときはけっこう多いし、そういうことがぜんぶ悪いわけじゃないんだけど、今回はよけいなプレッシャーがない状態でやりたいな、とは思ってましたね。

──鳥の声とか虫の声とか犬の遠吠えとか、フィールドの音がたくさん入ってましたが、そのへんの力の入れ具合というか抜け具合もこれまでと違うのかな、と感じたんですけど。

 あの「アオーン」っていう犬の鳴き声に関しては日本っぽいというか、夕方っぽいと言うか、ウナギイヌみたいな(笑)、そういう感じなんですけどね。

──ええ、あれは狙ってるな、と思いましたけど(笑)。

 僕も自分で作ってて笑いました(笑)。
 なんか、こう『ファンタズマ』だと空想とか夢っぽいというか、ちょっとボーっとしてる感じってあったと思うんだけど、今回は入り口が「こっちの世界」みたいな感覚はありますね。鳥の声とか犬の声とかはわかりやすいじゃないですか。イメージも具体的だし。そういう入り口がちゃんとある感じですかね。

──結婚して子供が出来ると、独身のときとはやらなきゃいけないことが変わったりするじゃないですか。そういうことは関係している?

 そうだね、それはあるね。「子供が産まれたから子供のための曲を作ろう」とかは考えなかったけど、でも影響はやっぱり受けてると思う。
 単純に休みの日の過ごし方が変わったりしてるし。例えば、前だったら休みの日にはどっか遊びにいったりしてたんだけど、今は子供を連れて公園に行ったりする。前は公園なんか行っても楽しめなかったと思うんだけど、今はふつうにそういうのを楽しめるようになってる。ひとりだと別に行ってもやることがないけど、子供を連れていくとそこにいる権利があるというか。遊んでみたらけっこう楽しかったりする(笑)。

──これから、子供をダシにしておもちゃを買ったりできますよ(笑)。

 そうそう(笑)。子供が欲しがってるからって言って自分が欲しいものを買ったりね。

──最近聴いた盤で面白かったものがあったら教えてもらえますか。

 最近衝撃だったのはねー、ASA-CHANG &巡礼 の『花』(笑)。あれ聴いた? あれはすごかったねえ。聴いた後になんの言葉も出てこない。「ズドーン」とくる感じがありましたね。

──一時期仕事場で聴いてましたが、仕事になりませんでした(笑)。

 あとは砂原(良徳)君の『Lovebeat』もすごいよかったな。最近リミックスをやったんだけど、Avalanchesの『Since I Left You』もよかった。夏の歌って感じで。それと、ジャネット・ジャクソンの「Someone to Call My Lover」が好きなんですよ。

カテゴリ : インタヴュー

掲載: 2002年06月27日 18:00

更新: 2003年03月07日 19:31

文/川崎 和哉