さよならナンバーガール!!!!!!(5)
センチメンタル過剰な対談 ~ナンバーガール解散に寄せて~
ラヴソングがなかった
久保田「向井くんは信念が強い人だなあと思いますよ。でも、その信念を成就するにあたって集まった、他の3人のことをないがしろにはできませんよね」
北沢「4人が4人で技を出し合って闘ってる〈チーム感〉っていうのかな。決して向井くんのワンマン・バンドではなかったという、バンドの魅力は大きいよね。なかでも、(田渕)ひさ子ちゃんの存在は大きかった。ひさ子ちゃんが画期的だったのは、女性ひとりっていうバンドのなかで、アイドル担当だけじゃないものを出していたところ。あのギターがないとバンドが成立しないっていうところまで完全にいってたし、可愛らしいのにそれを売りにしないし、する気さえない、まわりもそういう扱いをしない、っていうところがかっこよかった」
久保田「そう、アイドル担当を張れるぐらいなのに、扱いは男子連中と並列なんですよね。いっしょに並んだメンバーもメンバーだけに、さらにすごい!」
北沢「ギター・ヒーローでもあったんだよね。ギターをグーッと持ち上げてソロを弾くところとか、かっこよかったよね。そういう意味で、ひさ子ちゃんがロックの女性史を更新したと言ってもいいんじゃないかな」
久保田「そういえば、ナンバーガールの曲にはラヴソングがなかったですね」
北沢「〈キミとボク〉っていう歌は歌ってないでしょ」
久保田「対話っていうものがなくて、いつもどこかから眺めてる感じ」
北沢「僕が高校生のときに大滝詠一の『A LONG VACATION』が流行ったんだけど、それでラジオからはっぴいえんどの曲が流れることがよくあって。それではっぴいえんどを知ったんだけど、松本隆の視点、街を見る視点っていうのを、そんなに昔のものって意識はなくそのまんま共有できたのね。そのまんま自分の心情が重ねられた。いま自分が高校生だったら、それがナンバーガール、向井くんの視点なのかなあって。ナンバーガールって、初期の楽曲は静止している風景が多かったんだけど、だんだん動きがでてくるんだよね。たとえば、『NUM-HEAVY METALIC』のラスト“黒目がちな少女”とか、翻弄されつつも自分を見失わないでいよう、っていう気持ちで終わるというか。やっぱり世の中のほうが強いから、それに振り回されるんだけど、自分は見失わずに闘っていこうというか。飲み込まれまいとうか、抵抗してる。ナンバーガールって〈抵抗している〉感じがあった」
久保田「そういった〈抵抗〉みたいなものをパワーとして昇華していった感じですよね」
北沢「それがどんどん本物になってた感じでしょ。本物って、いるだけで周囲の人に違った景色を見せてくれる。たとえば、松田優作が目の前に現れたら、その周りは違う景色になると思うんだよね。ナンバーガールの存在自体が、だんだんとそういうものになりかけていたはずなんだ。美学に殉じた最期は確かに美しいけど〈美しすぎる〉とも言えるかな」
▼ ナンバーガールが愛した、お箸の国のROCKたち。
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