インタビュー

FACT

 海外を中心とした活動を経てUS名門レーベルからの世界デビューを掴み取った5人組バンド、FACT。プログラミングを導入したメタルコア・サウンドを軸に独創的なヘヴィー・ロックを構築する彼らが、最新オリジナル・アルバムと豪華リミキサー陣を迎えたリミックス・アルバムを発表した。能面の裏側に隠された正体とは――? セオリーを蹴散らしながら快進撃を続ける5人に話を訊いた。

  アメリカ西海岸の名門レーベル・ヴェイグラントと契約を果たした実力派バンド、FACT。彼らのサウンドはとても一言では語り尽くせない、驚くほどに多面的な構造で成り立っている。光が駆け抜けるような打ち込みのビート・トラックと、アクロバティックで爽快感抜群のメタルコア・サウンドが融合。その独創的かつ躍動感溢れるアンサンブルの上で、涙線を刺激しまくるクリーンでエモーショナルなヴォーカルと、血も吹き出さんばかりの壮絶な絶叫が描く、生々しくも美しいコントラスト。まさに〈ロック・フォーマットの最新鋭〉ともいうべきバンド・サウンドを志向している彼らだが、その特殊性はサウンド面だけではない。ご覧の通り、能面で表情を隠す彼らはれっきとした日本人であり、すでにバンド結成10年のキャリアを誇るヴェテランでもある。つまり今回届けられたセカンド・アルバム『FACT』とリミックス・アルバム『NIVAN RUNDER SOUNDRUGS』という2枚の新作は、いわば逆輸入のような形で我々に届けられたというわけだ。

――今年で結成10周年ですが、この10年を振り返って、どのような感想が湧いてきますか?

Tomohiro(ベース) みんな大人になったな……と。

――10年間続けることができたことに、何か秘訣は?

Kazuki(ギター)  FACTって、自分たちの好きなことを長くやれるバンドを目指して結成したんですよ。いろんなものを犠牲にして、潰れていったバンドを隣で多く見て来たんだけど、自分たちに嘘をつくことなく、無理せずに続けてきた結果かなと……。

――結成当初と比べて、メンバー間の関係性に変化などは?

Tomohiro 大人になったな……と(笑)。

――(笑)。この10年の間に、幾度か音楽性に変化があったかと思いますが、サウンドに影響を与えた転機で、特に印象的なことは?

Kazuki 実は、転機ってそんなに経験してないんですよ。作品を出すごとに、とにかく進化して来たった感じなので。前回と同じものは出したくないという思いが強いし、変化しないのは僕らにとっては退化に等しいことですから。毎日のように新しい音を企んでいるし、オリジナルでありたいし、パイオニアになりたい。FACTがFACTであることのアイデンティティーって、実はそこなんですよね。


――なるほど。ラウド・ロックの側面から見た、自分たちのルーツだと考えられるアーティストは?

Hiro(ヴォーカル)  ストラング・アウト、インキュバス。あとEijiは、ハードコア全般かな(笑)。スレイヤーもハズせないしね。ストラング・アウトは、FACT始めたきっかけでもあるんですよ。ああいうバンドになりたかった。インキュバスは、あの姿勢が大好きなんです。彼らこそ、作品ごとに常に変化たる進化をしているでしょ? でも、基本的になんでも聴きますよ。それこそ、みんなファットボーイ・スリム、ジャンキーXL、プロディジーも大好きだし。

――最近、意識してチェックしている音楽シーンはありますか?

Tomohiro シーンは……よく分からないな。僕らがシーンになかなか入れない人たちだから(苦笑)。カテゴライズされるのが大嫌いだから、僕ら自身そういった垣根を設けることには反対なんですよ。あえて言うなら、いまやっている北米ツアー(インタヴューは事故前に行われた)のライヴハウス・シーンかな。アメリカはまだまだライヴハウスが元気だし、とにかくキッズが多いんです。日本のライヴハウスは最近元気がないから、今度帰国したらそういったライヴを観せる、という意味でのシーンは築いていきたいと思っています。

――ラウド・ロックとテクノ、ハウスなどクラブ・ミュージックの要素が並列に扱われているのがFACTサウンドの特徴ですが、結成当初から両者の融合は行われていたのですか?

Tomohiro 結成から、ホントにずっとですね。とにかくジャンルなんか関係なく、何でも聴きます。ちなみに最近よく聴くのは、Kazukiは、ヴェネチアン・スネア、ファットボーイ・スリム、アンダーワールド、ジャンキーXL。Takahiroは、ドラムコークス、スクエアプッシャー、アニマル・コレクティヴ。Hiroは、DJスタースクリーム、ファットボーイ・スリム、アンダーワールド、ジャンキーXL。Tomohiroは、80kidz、ファットボーイ・スリム、ジャンキーXL、スティーヴ・アオキ。Eijiは、ヘルフィッシュ。あと、インターネットラジオで〈ジャングル〉〈ドラムンベース〉〈ブレイクビーツ〉〈スピードコア〉を聴き漁っています。「このビートを生ドラムで演奏したらどうなんるんだろう?」とか、「そんなことできるのか?」とか考えながら(笑)。

――クラブ・ミュージックとバンド・サウンドの融合は実現しやすかった?

Takahiro(ギター) 初めから、特に無理してくっつけたわけではないんですよね。自然の流れだったから、困難はなかったと思います。ただ、前作から四つ打ちのアプローチは採り入れていたけど、メジャーと契約して、機材面が劇的に進化したのは大きいとは思います。頭のなかにある音を現実に変換できる機材が揃った。そこが今作で、プログラミングが多くなった最大の理由でもあるんです。

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掲載: 2009年04月23日 16:00

更新: 2009年04月23日 17:44

文/冨田 明宏