FACT(2)
セカンド・アルバム『FACT』は、360°全方位に向いた音楽への探究心や実験精神がサウンドとして結実し、これまでの活動の中で蓄積してきたものすべて解放したかのような意欲作だ。そして最も驚くべきは、バンドの高度な情報処理能力である。リード・トラックとなった“a fact of life”に代表されるように、ハードコア、エモ、メタル、ハウス、テクノ、エレクトロ、ドラムンベース、トランスなど、さまざまな音楽性やサウンド・スケープ、グルーヴがハイスピードで渦巻く混沌としたアルバムながら、まったくと言っていいほど重々しくドロドロとした、負の要素は感じられない。むしろ清々しく、鮮烈ともいえる後味しか残らないのだ。それはまさに、このバンドの高いポテンシャルを物語っていることに他ならない。
――セカンド・アルバム『FACT』の制作期間はどのくらいだったのでしょうか?
Eiji(ドラムス) プリプロを日本で約1か月かけて作りました。曲作り自体は、3か月くらいかな……。その後で渡米して、本番に1か月半をかけて制作しましたね。
Tomohiro 実は、録音してミックスも終わってる曲が、まだ4曲あるんですよ。その期間に全部で19曲録音したんです。
――アメリカでのレコーディングは、どのような環境で行われたのでしょうか?
Kazuki ヴァージニアのプライベート・ビーチにある、プロデューサー(マイケル・“エルヴィス”・バスケット)の持ちスタジオです! 環境は最高ですよ。田舎過ぎて見事に何もない……煩悩が何も果たせない感じ……。これじゃあ、録音に没頭するしかない! 俺らのこと、本当によく分かってるよね(笑)。
Tomohiro 初めてプロデューサーを立ててやったんだけど、それも功を奏しましたね。迷った部分は、第三者であるエルヴィスがバッチリ判断してくれるから。もちろん、エルヴィスが音楽的にも、人間的にも、とても信頼できる奴だったっていうのも大きいけど。スタジオに到着してすぐに、僕らが入る直前まで作業していたストーリー・オブ・ザ・イヤーのミックスを聴かせてもらったんです。速攻でブッ飛ばされましたよ。
Takahiro あぁ、俺らの音もこうなるんだ……って(笑)。
――制作に入る前に描いていた青写真や、アルバム・コンセプトはありましたか?
Kazuki 一言でいえば、〈踊れるロック!〉ですね。
――このアルバムからは、初めから〈世界照準〉を意識して制作されたことが伺えます。国境を越えてもスルッと入っていけるくらい、間口が広くとられていますよね?
Kazuki それは、俺たちがいつも考えていることですね。初めてデモ・テープを作った時から、それをアメリカのレーベルに送りつけてたバンドですからね(笑)。
――レコーディング中に、メンバー間でキーワードとなった言葉などはありましたか?
Tomohiro これはエルヴィスが与えてくれたことなんだけど……楽器のチューニングです。異常なまでに厳しくやりましたね。そうすると、塊になった時の音の出方が半端じゃないんですよ!
――本作『FACT』を制作する上で、エルヴィスと方向性を固める話し合いなどは?
Kazuki うーん、特になかったかもしれません。音楽ですからね。とにかく楽しもうっていうことだけでした。あとは彼が、俺たちと対等に付き合ってくれたのも嬉しかった。音楽的なことで強要されることは、何ひとつなかったんです。僕らから、決して排他的にはならないようにしようと思ったくらいです。FACTを聴いてもらって、気に入ってもらってから仕事を受けてくれた人だから、事前に何らかをすり合わせておくには、日本で制作したプリプロ音源を送るだけで十分だったんです。すごくやり易いレコーディングでした。
――詰め込まれた音の情報量がものすごく多いアルバムなのに、不思議と重苦しい印象はなく、爽快感が強く残るアルバムですよね?
Kazuki そこは今回、かなり気にしましたね。ヴァラエティーに富んだ内容だっただけに、通して聴いたときの流れは、すごく大事にしました。だからこそ、メロディーはポップで、キャッチーな要素を散りばめて、そこに統一感を持たせた感じですね。やっぱり、僕らの最も大事なアピール・ポイントはメロディーだし、Hiroのヴォーカル、声質は最大の武器だと思っているので。
――「戦場のメリークリスマス」のメインテーマ、“Merry Christmas Mr.Lawrence”をかつてないアレンジでカヴァーしていますよね?
Tomohiro これは、元々コーンやインキュバスがいたインモータルってアメリカのインディー・レーベルの、クリスマス・ソング企画盤に参加したときに作ったものなんですよ。きっかけとなると、その企画に誘われたからって答えになっちゃうかな。スタッフを通してですが、ちゃんと坂本龍一さんにも聴いて頂いて、OKを頂けたらしくて。……自分らでも、よくOKしてもらったなと驚いてはいるんですけどね(苦笑)。