DJ TASAKA
電気グルーヴのサポート・メンバーやDISCO TWINSの一員としてアッパーなプレイを披露してきたDJ/トラックメイカーが、約4年ぶりのニュー・アルバムを発表! 最新ミニマル・ハウスの手法を通じて露わになった、彼のパブリック・イメージを覆す音楽的な個人史とは――? 本人に話を訊いた。
素材に近い音をポンポンと出した感じ
――TASAKAさんというと、電気グルーヴのサポート・メンバーとしての姿だったり、スクラッチが上手くて、ファンキーなハウスをかけるDJ、というのが一般的なイメージかと思うんですが、そのイメージで聴ける4年前の前作『GO DJ』に比べると、新作『Soul Clap』は表層的な部分ではすごい変化があるという。
「そうですね。例えば動画サイトで〈DJ TASAKA〉と検索すると、結果のいちばん上に出てくるのがピエール瀧さんの番組でやった〈DJ TASAKAのレコード供養〉のコーナーなんですよね。他人の家に行って、演歌と歌謡曲をミックスしたりして、お坊さんみたいにレコードを供養して帰るっていう、ものすごい馬鹿なコーナーがあったんですけれども(笑)。そういった、クラブとかに行く人には見せてない部分が、パブリック・イメージの最たるものなんだなって。そこからは、(新作は)程遠いものだな、っていう自覚はありますね」
――今回は、よりシリアスですよね。
「前回のアルバムはソロ名義ではあるものの、ゲスト・ヴォーカルだとかゲスト・ラッパーが5人、6人いたりとかして。いわゆるパブリック・イメージ的なおもしろい部分を表に出すというか、日本語でアタッキーな言葉を探したりとか、他者を呼び込んでやる作業が多かったんですね。で、今回はゲスト・ヴォーカルすらいない、まるっきり1人の作業だったんで、そこが違う部分ではありますよね。人を呼んだ時って、笑いがヴァイブを共鳴させるためのいちばんのフックになったりするし、同じスタジオで同じことでゲラゲラ笑っているところを形にするってところが、めざしている部分だったりもするんですけれど。KAGAMIとやっているDISCO TWINSも、アルバムを作った時は全曲ゲスト・ヴォーカルを呼んだんですけど、今回はまったく1人だったから、そこがデカかったかな」
――パーソナルということですか?
「そうですね。ただ、そうしようと思ったのは、〈ゲストは要らない〉と思ったからではなくて、DISCO TWINS(の存在)が結構大きかったんですよね。DISCO TWINSは、僕とKAGAMIとゲスト・ヴォーカルと、最低でもスタジオに3人いる。だから、今回のアルバムではDISCO TWINSに持っていっても発展のしようがないもの――より個人の趣向(を反映させた部分)というのが浮き彫りになりましたね」
――前作に関しては、『GO DJ』というタイトルに顕著なように、スクラッチやDJプレイでのギミック的なディレイがあったりと、DJのアルバムっていう印象が強かったのですが、今作では、いまの現場的な気分は反映されているんですか?
「前回のアルバムを聴くと〈何月何日、この時のDJ TASAKAはこんな感じだった〉っていう記録的な部分がやっぱりあって。そういう意味では、あんまり長く聴けねえな(笑)っていう反省点はあったりして。あとノンストップで繋がっているから、携帯プレイヤーで聴いても前の曲がかぶっていたりして、気軽に聴けねえなっていうのもあったので、そこからは程遠いものを作りたかったんですね」
――前作に比べて、BPMが結構落ちましたよね。
「そこがいちばんデカイですよね。しかも前回のアルバムなんて、出来上がった曲を全部CDとかダブ・プレートに焼いて、お客さんを目の前にしてDJセットを組んで記録したので、最初に出来上がった曲よりもBPMが4とか5とか上がっているんですよね。ここにある曲も、たぶん現場でかける時は、テンポをちょっと上げることになると思うんですけど。(今回は)お皿にのったコース料理として出したというよりは、まな板の上から皿に盛ったものをポンポンと出したという感じですね。素材に近いというか。まとめて〈こういうものです〉っていう提示をもうしなくていいだろうっていう」
――アラカルトでも楽しめる料理ということですね。
「そうですね」
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