インタビュー

DJ TASAKA(3)

ソロは長距離走――どこまで走っていけるかが勝負

――ダンス・ミュージックの流れとして、トッド・テリーがいて、ロジャー・サンチェスがいて、そこからアーマンド・ヴァン・ヘルデン、ベースメント・ジャックス、ダフト・パンクまで繋がっていくという、トッド・テリー・チルドレンの系譜……Bボーイとラテン・フリースタイルのミックスみたいな部分を日本でやられているのって、DJ TASAKAさんなのかなと思うんですけれど。

「いやー(笑)。こないだも話に出たんですけれど、トッド・テリーは本当に偉大なアーティストだなって、いま感じていて。自分より上の世代で言えば、テイ(・トウワ)さんなんかも、鼻毛ボーボーじゃない部分で、というか(笑)、よりソフィスティケイトされているんだけれど、芯になっている部分では、トッド・テリーの洗礼を受けている人。しかも(NYで活動していたという意味で)間近で。そういう部分は、いまだに音からも感じることができますよ」

――あと、前作『GO DJ』の2曲目“Speaker Typhoon”の歌詞では、〈SP-1200、TR-808、TR-909〉といったオールドスクールな機材の名前が登場しますよね。前作はキャッチーな世界観のなかでそういったグルーヴを生み出していましたが、今回も、そういったグルーヴは崩さずにやられていますね。

「そうですね。前だったらそういうもの(グルーヴ)が土台としてあって、そこに何を乗っけるか、振りかけていくか、っていうのがあったんですけど。でもそれはね、いま振り返ると〈コアな部分を剥き出しにするだけじゃダメなんじゃないか〉っていう照れがあったんじゃないかと思うんですよね。そういう不安も含めて、いちばん最初に話したパブリック・イメージ的な部分が、あらぬ方向に(笑)……行ったのかなっていうのがあって。いや、〈レコード供養〉とか、おもしろくて全然いいんですけど(笑)、別に何も乗っけなくていいかな、ってやっと思えるようになった。オッサンになったのかもしれないですけどね」

――DISCO TWINSとしての活動では、いまのミニマル・ハウスのようなトレンドの一方で、ジャスティス以降のフレンチ・エレクトロなんかに共振する部分はあるんですか?

「ジャスティス以降ですごい新しいものがあるから吸収しなくちゃ、っていう意識はあまりないですね。たぶんKAGAMIもそうだと思うんですけれど。そういう意味では、(DISCO TWINSは)派手っていう言い方はできますよね。DISCO TWINSは短距離走――ダッシュでどこまでやれるか。一人の時は長距離走――どこまで走っていけるか、という違いがありますね」

――今作とDISCO TWINSの初作との制作時期はかぶっていたんですか?

「かぶってましたね。2007年には、ソロ・アルバムになるかなって曲が10曲くらい仕上がっていたんですけど、単純に、もっとおもしろくてカッコ良いものが出来るな、と思ったので一旦リリースはやめよう、ということになって」

――最初に10曲作ったなかで、今作に収録された曲はあるんですか?

「いや、一切ないんですよ。その頃は、スウィッチのレーベル、ダブサイデッドあたりのサンプルの使い方に影響されたような作り方をしていて。ジェシー・ローズとかね。全然ダメってわけじゃなかったんですけれども、すごい賞味期限が短い感じのものが出来上がっていて。クラブでかけて、自分のセットに入ったんだけれど、それで任務終了って感じのものがドンドン出来てたんですよね」

――スウィッチもトッド・テリー的というか、フィジェット・ハウスと言われる流れにいる人ですよね。

「いま思うと、そうかもしれませんね。その辺の部分(フィジェット・ハウス的な手法)は、KAGAMIとやった方が伸ばせるかなという意識もあったと思うし。ソロのアルバムという意味では入らないな、っていう。そういえば今回、(これまでノンストップ・ミックス作品が多かったので)曲間は何秒(が適切)なのかな?って改めて考えるのも新鮮でしたね」

▼文中に登場した作品を紹介

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2009年07月22日 18:00

更新: 2009年07月22日 18:01

文/リョウ 原田