DJ TASAKA(4)
同世代がフロアで見受けられないのはどういうことだ!?
――先程、アラカルト的、というかガチガチのコース料理になっていないアルバム、という話がありましたが、とはいえ、アルバム全体の流れはイントロからアウトロまで流れがある作りになっていますよね。そういう意味では、アルバムを最初から最後まで通して聴いてほしい、っていう思いはあるんですか?
「うーん。いま、音楽を聴いている人のスタンスを考えると、〈できれば、通して何回か聴いてね!〉って感じだと思うんですよね。それよりも、〈プレイリストに多めに入れてね!〉くらいの感じですかね(笑)」
――今作でやられている音楽性を考えると、〈1曲ごとにDJ用の音源として海外展開〉というのもあり得るのかな、と思うんですが。今回は、なぜDJ TASAKA名義のアルバムとしてリリースを?
「そうですね。いまだったら配信用のサイト〈beatport〉なんかにレーベルを立ち上げるなり、海外のレーベルに2、3曲送ってやらせてもらうなり、っていうのもひとつの手だとは思うんですよ。だけど、そうじゃないところでやりたい、っていうのが確実に自分のなかにあって。自分がやっているような音楽は、どんどん〈コアでわかりにくいもの〉という風に見られがちになっている。そこは壊したい部分なんですよね。まあ、J-Popっていう括りも僕のなかにはないんですけれど、いろんな音楽が同等に並んでいて、新しく出会った音楽を手軽にチョイスできる道、っていうのがどんどんなくなっているような気がしていて。〈DJ用の配信サイトの片隅に1曲アップロードされている〉ことよりも、〈都心からすごく遠い場所の、駅前のCDショップにも並んでいる〉っていうことに、今回に関しては可能性を感じる部分がある」
――クラブ・ミュージックの文脈を持ってない人にも、提示できるようにしたい?
「そうそう。いまは、文脈がすごい必要とされちゃう気がするんですよね。何でなのか、ちょっとわからないですけれど」
――確かに、ミニマルというジャンルで括るには、すごい聴きやすいアルバムですよね。
「ミニマルなんですかね(笑)。ミニマルと言うには、相変わらず色味も展開も多いし、曲も短いかな、っていう気がするんですけどね。〈ああ、TASAKAもミニマル化ね。やっぱ、イマっぽいことやってるのね~〉で終わっちゃうのは嫌だなっていうのが、自分のなかではあって。だから、なかなか説明に困るんですけど(笑)」
――ご自身の念頭には、〈ミニマルやるぞ〉っていう意識はなかった?
「うん。というよりも、さっき話したトッド・テリーのようなものが、最新の曲と同等に聴ける、っていう耳になってきているので、そこが判断基準になっていましたね。ただミニマルをやるだけだと、2年前に作っていたダブサイデッドっぽいものを作って終わっちゃっていたと思う。今回は、そこよりもうちょっと先に行きたい、作品としての強度を強めたい、っていうのはあったんですよね」
――先程の、〈普段はJ-Popしか聴かないお客さんにも作品を届けたい〉という話にも近しいと思うんですが、例えば〈WIRE〉も、トコロテン方式で若いお客さんが次々と入ってくる。そういう新しいお客さんって、音楽の捉えかたが世代ごとに全然違うと思うんですが、そういうのを10年近く間近で見ていて、何か思うところはありますか?
「そうですね。トコロテンっていう意味では、僕が気にしているのは、出て行っちゃう人。〈あんた、そんなに早く出ていくつもりだったの!?〉っていう。そんなチャイルディッシュな文化でいいのか、っていうのを感じることはありますね。なんで、音楽と遊びが下の世代だけにフォーカスされているんだろう?って。〈WIRE〉だって、スタッフも主催の卓球さんにしても、もう40代なわけで。その同世代がフロアで見受けられないのはどういうことなんだろう?っていう謎はありますよね。そこに訴えたいな、今後は。〈まだ君はそんなにオバちゃんじゃないよ!〉っていう(笑)」
――以前、THA BLUE HERBが(自作を称して)大人のヒップホップっていう話をしていた記憶があるんですが、そういう意味では今作は大人のテクノ/ハウスかもしれませんね。
「前回と比べると、そういう部分もありますよね。TOBYちゃんにこのアルバムを渡したら、次に会った時に〈すごい良かった……大人になったね!〉っていう、すごい端的な感想を言われて(笑)。ああ、俺もその枠に入ったのかって。ちょっと髪の薄い人に言われると、さすがに説得力があるな、と(笑)。まだ、みんなどうしたらいいのかわからないけど、〈(音楽を)ずっと楽しむにはどうしたらいいか〉っていう課題はあるかもしれないですね。ただ、上の世代の人の声が聞こえてこないだけかもしれないですけど。いるにはいるけど、そういう人があえてブログを書いたりとか、発信していないだけで、フィードバックが見えにくいだけなのかもしれない」
――そういう意味では、今作は家庭の事情なんかで、外で遊べない方もバッチリ聴けるアルバムですよね。
「いやー、子供いる奴が作っているアルバムなんですから、それくらいはいかないと。これからは、サブフロアに託児所を用意したりとかね(笑)」
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▼文中に登場した作品を紹介
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