LONG REVIEW――HAIIRO DE ROSSI 『SAME SAME BUT DIFFERENT』
ファット・ジョンやOlive Oil、Michitaといったトラックメイカーを迎えたHAIIRO DE ROSSIのファースト・フル・アルバム『True Blues』は、いわゆる〈ジャジー・ヒップホップ〉の決定打とでも言うべきビートが詰まった作品だったし、スルスルと泳ぎ回る主役のスムースなライミングは、その流麗なサウンドと抜群の相性を見せていた。どこまでも洒脱。それ故に、日本語ラップの門外漢にも広くアピールし得る作品だった。だが、あれから約1年半を経て届けられた新作『SAME SAME BUT DIFFERENT』は、従来のエレガンスを継承しつつも、より硬派な魅力を備えたアルバムと言えるだろう。
ドープなルーツ・レゲエをDJ KEITAによるプレミアばりの小気味良いスクラッチがかき消し、Yakkleが組み上げたファット・ビーツが轟く冒頭からして、聴き手はこれまでにない凛とした空気を感じ取れるはずだ。メロディアスな展開は影を潜め、ミニマルでファンキーなトラックが全編を貫いている。豊かなヴォキャブラリーを操ることよりも、シンプルな言葉で明快なメッセージを紡ぐことに主眼が注がれている。ここでのHAIIRO DE ROSSIはかつてない正攻法でもってヒップホップと向き合っているように思える。
だがアルバムのラスト近くでは、一転して叙情性たっぷりの繊細な楽曲が畳みかけられる。特に盟友・Eccyの手によるタイトル・ナンバーは、どこまでも美しくソウルフルな逸品だ。タフにしてしなやか。この曲に滲むメランコリーこそ、HAIIRO DE ROSSIの音世界に一貫して見出せる魅力なのかもしれない。