INTERVIEW(1)――いいハウスは確実に存在する
いいハウスは確実に存在する
——アルバムのリリースって実は3年ぶりなんですよね。長いインターヴァルがあったのには何か理由があったんですか?
「デモは随時作っていたんですけど、作品集を2枚出したり、移籍のタイミングもありまして……充電期間というか、トラックを作り溜めするという期間を設けたんです。それで気付けば3年。その間はいろいろDJで回ったりしていたので結構早く感じましたね」
——そのインターヴァルってやっぱり自分の作品や作風に変化をもたらしたと思いますか?
「やっぱりフロアや現場でお客さんの反応を見たり、いろんな方の曲を聴いたりダウンロードしたりするじゃないですか。参考になるトラックも多いし、新しい発見もあった。だからすごく影響はありましたね」
——例えば、クラブ・シーンにとっての3年間って凄い早いですよね。そして3年間を振り返ってみると、エレクトロが盛り上がるなか、クロスオーヴァーが加速化してどんどんジャンルレスになっていった流れが起きたと思うんです。そうした流れをどう捉えていたんでしょう?
「そうですね。いまの主流のエレクトロは僕にとってはちょっとロック寄りすぎるんですよね。ただ、ブギーな性質のものは全然OKだったりする。例えばアルカディオンとか、いまのデイム・ファンクとかのサウンド。あるいはラリー・レヴァンが80年代にかけてたエレクトロ・ファンクというかエレクトロ・ディスコ、ルーツ・エレクトロと呼ばれていたものはもう大好きなんですよ」
——そうやって自分の好きな音との接続点を見ていたわけですね。でも、いろんなDJたちがいわゆる〈いま〉のエレクトロ・サウンドを採り入れていますよね。それこそオムのようなディープ・ハウスやシカゴ・ハウスの流れを組んだアーティストまでも次々と影響を受けていくじゃないですか? そうした様子をどう感じていましたか。
「そうですね。実際、DJの多くがそういうスタイルになっている流れはありますよね。でも、一方でそこから音楽を聴きはじめた人もいっぱいて、ここ2、3年の間にクラブ・シーンのお客さんの層も入れ替わりがあったと思うんですよ。例えば先週韓国に行ったんですけど、やっぱりエレクトロをきっかけにクラブが盛り上がっていますし」
——韓国のクラブには行ったことがないですけど、いまのK-Popの台頭を感じると、かなり熱いんだろうなと感じます。
「そういう感じでいまのエレクトロからクラブ・ミュージックに入った人が大勢いるんですけど、そのなかからルーツ・ミュージックを掘り下げるという流れも生まれてきてるんです。なので、そこはエレクトロでも、流行ものではなく、ルーツの系というか、自分のスタイルに合った楽曲を取り入れてDJをするようにしてます。それがクリエイターとしてあるべき姿かなって思いますし、作った楽曲と全然違うスタイルでやるとお客さんとしても戸惑いますしね。いまのエレクトロをかけるDJたちといっしょにブッキングされることも多いですけど、そこでどう勝負をしていくかなっていうのはよく考えます。変な話、踏んばりどころですよ(笑)。エレクトロってタテノリで、僕はどちらかというとNYのディープ・ハウスに影響を受けていてヨコノリですから、どうお客さんをハメていこうかなって考えたりしています」
——その他に、シーンのなかにいて感じることはありましたか?
「ハウス・シーンが元気ないとか言われているけど、意外といいものもあることですかね。確かにUSはリリースが少ないので、ヨーロッパが中心になってくるんですけど、イーゼルというヨルバ(オシュンラデのレーベル)からも出しているのアーティストには注目してます。アフロなテイストを採り入れながら、エレクトリックなシンセを駆使した歌モノを作ってるんです。フィル・アッシャーもそうですけど、いいハウスは確実に存在するんですよね。あと、普遍的な歌心が僕の楽曲を作る際のテーマなのですが、歌モノは、エレクトロ隆盛のなかでもオーディエンスには伝わりやすいというのはありましたね。そうじゃないDJはもっと考えないといけないし、違うやり方を考えないといけないから大変だと思います」
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