LONG REVIEW――DJ KAWASAKI 『PARADISE』
いやはや、先行配信シングルとなった“Paradise”を聴いた時は本当にたまげましたよ。かのアンダーグラウンド・レジスタンス=URを想起せずにはいられないテクノが流れ出したかと思えば、そのうえでCOMA-CHIが弾けるようなメロディーを豪快に歌い上げる……しかも日本語詞で! デトロイト・テクノと和製ハウスのアクロバティックな融合にクラクラしてしまったのだが、この思いもよらぬ試みはシングルだけのカマシではなかった。3年ぶり3枚目のオリジナル・アルバムとなる本作は、全編でURの系譜に連なるドラマティックなエレクトロニック・サウンドをフィーチャーした文字通りの野心作だ。
生のストリングスをフィーチャーした美麗インスト“Heaven”、ダンス・クラシックの香りを漂わせるブギー“Feel the Music”、ソウルフルなディープ・ハウス“Love Crash Down”などなど、楽曲ごとにさまざまなスタイルを取りつつ、UR的としか言いようのないメロディー/ハーモニーが終始ロマンティックに舞い続ける。電子音主体ながら、現行のテック・ハウス~ディープ・ミニマルの硬質な鳴りとは対極の、柔らかな音像に仕上げているあたりがDJ KAWASAKIらしい。ジャパニーズ・ハウスの看板を背負い、メジャー・フィールドにもその名を知らしめる氏がかくも大胆な変化を遂げたことがシーンにどのような波紋をもたらすのか? そのあたりも興味がそそられるところだ。
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