INTERVIEW(3)――新しい歌い回しを感じた
新しい歌い回しを感じた
——少しKAWASAKIさんのことがわかった気がします。あと、アルバムの軸を担っているのがデトロイト・テクノの影響だと思うんですが、これは元々KAWASAKIさんのなかにあった音楽なんですか?
「そうです。ムーディーマンやセオ・パリッシュ、もちろんURも大好きですし、あんまりイメージないかもしれないですけど、実はDJプレイでもグレン・アンダーグラウンドやピラーナヘッドとか、ドロっとしたファンクの要素が含まれているトラックを頻繁にかけてるんですよね。それは確実にいまの僕のスタイルに影響を与えています。あとドイツのローランド・アペルってアーティストがいて、彼はテクノをやってるんですけど、“Dark Soldier”って曲のリミックスをやらせてもらったんです。その曲は、DJヘルがプレイしたりテクノ系のDJの方に評価していただいて、そういうサウンドを中心に作ってみたいなっていうのがあったんです。実はファーストやセカンドでも1、2曲はデトロイトに影響を受けた曲をやっていたんですが、アルバム通してやるのは初めてで、自分のクラシカルな部分が好きなファンをこっちの世界に引きずり込むというのが大きなチャレンジでしたね」
——アルバムを聴いていると、“Galactic Love”や“Say You'll Stay”はデトロイトとNY、そして歌心のあるKAWASAKIさんらしいトラックが交わるポイントをめざしているような気がします。
「NYとの中間点というかディープ・ハウスとデトロイト・テクノがミックスされたようなところはイメージしました。歌モノを作っていて、アプローチを悩んでいるなかで、DJでかけているセオやムーディマンのスタイルが自然と導入されていた感じですね。ハウス・ミュージックといってもいろいろあるし、ジャパニーズ・ハウスと言われているなかにもポップスを4つ打ちにアレンジしたものから海外を意識したものもあるじゃないですか。そういうなかで新しいというか自分のジャンルができたらいいなと思って作った感じはありますね。新しいところに飛び出していきたい気持ちもあったし、それがリスナーの方に感じてもらえたら嬉しいですね」
——ちなみにアルバムのなかでいちばん最初に出来た曲はなんだったんですか?
「“Galactic Love”です。歌モノにしようと思ったんですけど、オケのパワーが強くてインストになりました。その後に“Paradise”が出来たんですけど、あれは逆に歌を入れた形ですね」
——その“Paradise”ですけど、COMA-CHIさんがヴォーカルとして参加しています。これは意外な人選だと思うんですが。
「僕は仕事をする時、有名無名は関係なく、なおかつ音楽制作をする前に互いをわかり合ってから仕事をしたいんですよ。で、元々COMA-CHIはThe ROOMで知り合って、〈breakthrough〉ってパーティーでJazzy Sportのメンバーに紹介してもらったんです。僕はMitsu the Beatsくんが大好きで、彼も参加した彼女のひとつ前のアルバムを聴いていたんですけど、彼女と話したら彼女も僕の音楽を聴いてくれていたみたいで意気投合したんですよね」
——彼女のどこに魅力を感じていたんでしょうか?
「日本人のヒップホップの人でこんな格好良いアルバムを作れるのはすごいなって思いましたね。おまけに彼女はラップだけじゃなくて歌も歌えるじゃないですか。それでこの人に歌を頼んだらおもしろいなって思ったんです。で、ショット3杯くらいで未来の共演を誓い合い(笑)、すぐにお願いしてスタジオに来てもらって、そこからはあっという間でしたね」
——“Paradise”はDJ KAWASAKIにとってはじめての日本語詞の曲になりますが、ものすごいインパクトですよね。まさか、DJ KAWASAKIの曲で〈ドゥ・ザ・ハッスル〉って言葉を聴くとは思いませんでした。
「パワフルですよね。その後に〈半端じゃない〉ってくだりがあって、そこも好きなんです。新しい歌い回しを感じたというか。沖野さんが〈“勝手にシンドバット”以来の衝撃〉って言ってましたよ(笑)。日本語なのか英語なのかわからない感じがいい。メロは僕が書いたんですけど、これでメロにハマるのかっていう歌詞が来たんです。でも歌うとハマってる。そこはすごいですよね」
——日本語詞の楽曲を制作して、他に得られたことはありますか?
「やっぱりリスナーに届きやすいし、伝わりやすいですよね。いっしょに歌えるし。僕って相反したものを合わせる作業が結構好きで、今回の日本語詞や、ラッパーとハウスという組み合わせだったり、そういう新しいアイデアや組み合わせはこれからも色々と考えられそうだなって思いました」
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