INTERVIEW(2)――エモーショナルでロジカル
エモーショナルでロジカル
――じゃあ、ご自身の活動についてはバンド的な方法論でやって来られたわけですか。
「cafelonは歌もののポップスをやるバンドとして10年間、活動してきました。ただその間に音楽シーンもだいぶ変化して、〈いろんなことができるんじゃないか〉って気持ちが芽生えてきたんです。機材状況も、自分の指向も変わってきて」
――その指向の変化についてもう少し教えてください。
「バッド・プラスとE.S.Tっていうジャズのバンドがいるんですけど、彼らを知ってすごく影響を受けたんです。エイフェックス・ツインをカヴァーしたり、電子音響みたいな要素を採り入れたり、ジャズにカテゴライズされてるのに、すごく現代的なことをやってたんですね。もともとジャズって自由なスタイルの音楽だと思うんですけど、そういう感覚を受け継いでるのは彼らみたいなバンドじゃないかと。そういう切り口で自分もやれたらいいなと思ったんです」
――いかにもなジャズじゃないところにジャズを感じた。
「ピアノはずっと好きだったんですけど、プレイヤーとしてひたすらテクニックを磨いていく、フュージョンみたいな方向には行きたくないなと思ったんです」
――そういう気持ちで始めたのがSchroeder-Headzということですか。
「ええ。ピアノ・トリオっていういちばんシンプルな編成のバンドがやりたかったんです。その編成でダンス・ミュージックの構造をおもしろおかしく翻訳しようというアイデアがありました。機械で作る音楽の気持ち良さを理解したうえで、それを生の演奏に置き換えた時、何かすごい発見があるんじゃないかなあと」
――やりたいことが最初から明確に見えてたんですね。
「U&DESIGNというバンドのベースとドラムスが今回のアルバムのレコーディングメンバーなんですけど、バッド・プラスがエイフェックス・ツインのドリルンベースの曲を生でカヴァーしてる映像を2人に見せて〈こういう感じで演奏してよ〉みたいに説明して。〈こんなの無理〉とか言われたんですけど(笑)、実際にやってみたら3人しかいないこともあって、生のアンサンブルのおもしろさがすごく良く見えたんですよ。その時点で〈あ、このバンドは上手くいきそう〉って思いました」
――楽曲は3人で作っていくんですか?
「いや、僕がまずデモを作るんですけど、あえてものすごくいい加減なものにするんです。それをもとにやってもらうと、プレイヤーは欠けてるところをちゃんとカヴァーしてアレンジしようと無意識にするんで、そこを狙って」
――なるほど。
「ダンス・ミュージックってシンプルな繰り返しが基本になってるけど、それをどう飽きさせないかってことを作り手はすごく考えてると思うんです。Schroeder-Headzの場合は、自分を含めたプレイヤーが、つまらないデモをおもしろいものにしようとする。そういう翻訳ですね」
――ものすごくコンセプチュアルに音楽を作られてるんですね。
「やっぱり最初に出会った坂本龍一さんの影響なんですかね。右脳と左脳を両方使う快感みたいな……エモーショナルな部分とロジカルな部分を両方組み上げて音楽を作っていきたいんですよ」
――プロデューサー的な視点で、めざすものの全体像をはっきり捉えてる。
「もともと〈戦メリ〉が好きでピアノを始めて、ああいう音楽を作って人を感動させたいという気持ちが根っこにある。でも、いま素直にピアノで美しい曲を作ってそのまま出しても、聴き手にちゃんと届かないんじゃないかと。どういうアウトプットだったら聴いてもらえるだろうっていうことを考えて、試行錯誤した結果が今回のアルバムですね」