INTERVIEW(1)――その場の直感を大事にした
その場の直感を大事にした
――バンドのポテンシャルが十分に引き出されたアルバムだと思います。みなさんの手応えはどうですか?
波多野裕文(ヴォーカル/ギター)「そうですね。実感として、これ以上はちょっとできないなってところまで行けたかな、と。もちろん、毎作そうでありたいと思うんですけどね。今回はがんばったって感じです(笑)」
山口大吾(ドラムス)「最高です。すごくいいものが出来たと思いますね。過去に作ってきた作品もそのときのベストを尽くしてきたから、ちょっと比べることはできないんですけど」
福井健太(ベース)「今回は、より伝えられるようになったと思いますね」
――バンドが意図していることを?
福井「再現できるようになったということですね、バンドで。そこは3人とも強くなったんじゃないかな、と」
――ひとつひとつ訊いていきたいと思うんですが、まず、曲のタイトルが地名(“東京”“アメリカ”“ベルリン”“レテビーチ”など)になってますね。
波多野「それはいちばん最後に決めました。制作に没入しているうちに自然とそうなったというか、全編に渡って旅をしているような感じがあったので。(曲とタイトルの)結び付きはそれぞれ違うんですけど、すべてにちゃんとした意図はありますね」
――〈旅をしている感覚〉というテーマは、最初からあったんですか?
波多野「いや、全然」
――ということは、いつも通り、その瞬間の直感に任せながら作っていった、と。
波多野「そうです。すいません、何か(笑)」
――いえいえ(笑)。では、アルバム制作の入り口になった曲はありますか?
波多野「けっこう前に作った曲もあるんですよね。前作の『Ghost Apple』のとき、あえて録音しなかった曲があって。そこから始まってる感じですね、今回は」
――どの曲ですか、それは。
波多野「えーと、“ベルリン”“ストックホルム”“マルタ”とか。『Ghost Apple』の性質とは合わないと思ったんですよね。感覚的なことなんですけどね。もちろん政治的な理由なんかではなく(笑)」
――『Ghost Apple』の後、ファースト・シングル“Sky mouth”もリリースしてますが、その間、制作スタイルの変化などはありましたか?
山口「(シングルは)ツアー中に作ったんですけど、今回はそこが活かされてる部分もありますね。似たような作り方をした、というか」
波多野「あのときは必要に迫られて、スピード感のある作業になったんですよね。今回のアルバムはすごく制作に時間をかけたんですけど、シングルのときのやり方を採用したというか、その場その場の直感をさらに大事にしてたんです。各々の音に対する反応も速かったし、より感覚的になれたんじゃないかなって」
福井「『Ghost Apple』にも3人の個性がそのまま出てる曲が多かったんですけど、より自由にやることによって、それがさらに強まってると思いますね」
――自由度が上がった?
福井「上がってますね。最後は歌詞や歌が乗ることできちんとカタチになるので、その前の段階ではとことん暴れるというか、型にハマらないでいたいので」
山口「シングルのときは、ツアー中っていうこともあって、できるかできないかわからないっていう不安もあったんです。でも、そういう過酷な状況のなかでもちゃんと曲が成立したから、〈俺らならできる〉っていう気持ちがあったんですよね、今回は」