INTERVIEW(3)――錯覚みたいなものも含めて現実
錯覚みたいなものも含めて現実
――(笑)。『Family Record』にはスッと飛び込んできて、響く言葉がたくさんありました。たとえば〈強くなることは とても恥ずかしい/本当はね〉だったり。
山口「グッと拳を握りたくなりますよね(笑)」
――うん、ホントに。歌詞についてのディスカッションはあるんですか?
山口「ないっすね。歌詞が乗ったときに〈これ、いいね〉って言うくらいで。ここはこうしたほうがいい、みたいな話はしないです」
福井「僕もしないですね。タイトルにしても最終確認だけ。〈これでどう?〉って言われて、〈いいね!〉って」
――なるほど……あの、今回の歌詞はこれまで以上に現実の世界と接近してると思ったんですよ。“JFK空港”における〈経済は脆くも崩れた/粉々に割れたクレジットカード 水浸しの小切手〉はまさにそうですが。
波多野「その境目は意識できないんですけどね、自分では。それは僕の性格、性質でもあるし」
――現実と空想が混ざってる、と。
波多野「いや、僕はほぼ、現実のつもりで書いてます。でも、錯覚みたいなものも含めて現実だと思ってるので。その捉え方は人によって違うし、分析するのは難しいんですけど」
――日常の生活やニュースから題材を見つけることもある?
波多野「題材は、もちろん僕の人生経験から見つけることもあるでしょうし。僕からすると、一般的に広く聴かれているもののほうが非現実的なことを歌ってる方のほうがすごく多いと思いますいけどね。〈どういうのか?〉って言われると困るんだけど――たとえばAKB48とか、すごくアヴァンギャルドだと思います、むしろ(笑)」
――まあ、リアリティーはないですよね。
波多野「そうなんですよね。ただ、表現の根本としては、誰にでも見えるようなものを作ることに――それは歌詞だけじゃなく、音楽自体もそうなんですけど――あまり価値はないと思っていて。自分の、自分たちの感性っていうものがいちばん出るカタチでないと、意味がないと思うんです。だから、表現を突詰めていけば、逸脱したところが出てくるのも自然なことなんですよね。むしろ、そこを特化して表現することに意味を感じますね。そうやって出来たものは、普段、誰もが考えてるようなところに向かっていくと思うし」
――自分たちの個性、感性を突き詰めることが、実は深いところで繋がれる表現になる。
波多野「そう、根本的なところで繋がれるはずだと思ってます」
――歌詞についてもうひとつ。“市街地”“JFK空港”ではスポークン・ワーズ的な手法が使われていて。単純に言葉の数が増えてますよね。
波多野「言葉数は増えれば増えるほど嬉しいですね。メロディーがないほうが制限なく書けるし、水を得た魚になれるので(笑)」
――どうしても言いたいことがあるというか、基本的に言葉による表現を信用してますよね。
波多野「そうですね。今回はもう、歌詞にかける時間がすごく長かったんです。最近はもう〈ドラムとベースと言葉〉くらいのウェイトになってるので。このCDで表現したいことを突き詰めていったら、そうなっていったんですけど」
――このままヒップホップに近付いていくようなことは……。
波多野「もしかしたら。この2人も、どう見てもBボーイだし(笑)」
山口「この後もclub asiaでライヴですから」
福井「フロアを揺らします(笑)」
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