インタビュー

ハンバートハンバート 『さすらい記』

 

ハンバートハンバート

 

[ interview ]

『まっくらやみのにらめっこ』から2年半。アコースティック・デュオ、ハンバートハンバートがニュー・アルバム『さすらい記』をリリースする。フィドラーズ・ビドとの共演作となるCD+DVD『合奏』や充実した歴史を詰め込んだ編集盤『シングルコレクション 2002-2008』のリリース、そして佐野遊穂の第二子出産を間に挟み、こうして届いた久々の新作。映画「プール」の主題歌“タイヨウ”の原曲となる“妙なる調べ”やドラマ「2クール」のエンディング・テーマだった“罪の味”、そしてあの“アセロラ体操のうた”も含まれており、ここ数年における彼らのベスト・ソング集的な趣もあるのだが、〈変わらない強さ〉をしっかりとアピールしているのが何よりもの美点だ。インタヴューの席には、自身の音楽と同じように柔らかいリズムを奏でるふたりがいた。

 

 

あともうひと押し!

 

――2年半ぶりのオリジナル・アルバムってことで気合いが入ったりしました?

佐藤良成(ヴォーカル/ギター/フィドル他)「気合いはいつも入れているんですけどね(笑)」

佐野遊穂(ヴォーカル/ハーモニカ他)「(佐藤に向かって)今回はどこに気合いを入れましたか?」

佐藤「どこに気合い入れたかなぁ……。あ、そうだ、ミックスにずいぶん時間がかかっちゃいましたね。理由は、締め切りを設定せずに録りはじめたので、良く言えば余裕があり、じっくりと作業ができたんですが……でも詰めるところが尽きなくて、結局ギリギリまでエンジニアとやり取りしていました。やっぱり締め切りがないと駄目だなと」

――その様子を見ていてどうでした?

佐野「かなりやばかったですねぇ。すごく落ち込んだりしてました」

佐藤「録りはじめてからマスタリングするまでに10か月近くあったので、ほぼ1年それに専念したってことですよね。〈何かちょっと足りない〉〈あともうひと押し!〉みたいな状態が延々と続いて。自分ひとりで宅録しているわけじゃないですからね。たくさんの人が集まって、その人たちの解釈や味が演奏に反映されているわけで、その音を無理に自分のイメージに近付けすぎると、抽象的な言い方ですが自分の部屋に閉じこもったような音になってしまう」

――しかし、このアルバムには小さな部屋のなかで完結してしまうような曲も多いわけですよね、ある意味で。

佐藤「そうなんですよ」

――とてもロックなフィーリングを感じさせるアルバムに仕上がっていると思いました。ところで今回の参加メンバーは?

佐藤「いつものライヴ・サポートメンバーに加えて、僕がやっているロック・バンド、グッバイマイラブの村井健也くんや、『合奏』(2009年)で共演したスコットランドのフィドラーズ・ビドに参加してもらってます。ピアノで三柴理さん、それから則竹裕之さんが(ドラムを)叩いてくれてるんですよ」

――オープニング曲“待ちあわせ ゆめうつつバージョン”の則竹さんのプレイは、〈おっ!?〉と思いましたよ。ラフなドラミングで。でも最高の雰囲気を生み出してる。

佐藤「きっと意外な感じがすると思いますね。ああいう方ですから、こういうふうにしてほしいとお願いすればどんなふうにでも叩いてくれたと思うんです。彼とセッションした曲に関してはなるべく具体的なリズムを指定するデモを作って、どういうタイプのグルーヴが必要かをしっかり伝えました。うん、やっぱり意外な感じでしょうね」

――収録曲は、近年のハンバートハンバート傑作選といった様相を呈してますね。

佐藤「2年半の間に出来た曲をただ集めただけなんですけどね」

佐野「ほんと、終わると次はどんなアルバムにしようか、って考えてばかりなんです」

――終わりなき旅ですね。

佐藤「そうですね」

佐野「でも、締め切りがないとずっとミックスやっちゃうんだからさ、レコーディングでも同じことになるだろうね、時間をもらっちゃうと。ずっと1枚にかかりっきりになりそうだよね。今回は2年半かかっちゃったけど、どんどん出していかないとね」

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掲載: 2010年11月03日 18:00

更新: 2010年11月04日 22:22

インタヴュー・文/桑原シロー