INTERVIEW(4)――はみ出た部分が個性
はみ出た部分が個性
――そうか。昔を思い出してみて、理想とする音楽の形が変化したなぁ、って感じることはある?
佐藤「理想って年々なくなってきてるんですよね、ほんとに。でも、ないってことはとても良いことだと思うんですよ。音楽をやりはじめた頃って、お手本というか理想形と呼べるものは多々あったんですが、やっていくほどに〈それはそれ、これはこれ〉と思うようになったんです。昔はトム・ウェイツやボブ・ディランのアルバムをイメージして、こんな感じのアルバムがやっぱ最高だな、って夢を膨らませていたりしたこともあったけど、最近はまったくなくなりました。大先輩である彼らの音楽と僕らの音楽を比べるのは大変おこがましいけど、正直どっちも同じ土俵にあるって思うんです」
――いや、そのとおりだと思います。
佐藤「作品として世に出している以上、どんなに不完全なものであろうと、同じ土俵で比べられているものですから。もちろんクォリティーの面などだいぶ違いますが、だからどうだとか、もはや考えていないというか。それは後々に受け取った人が判断することですもんね。つまり、その……なんか助け舟出して(笑)」
佐野「助け舟(笑)? でもアレだよね、自分が憧れた音楽のように、聴いてくれた人がワクワクしてくれたらいいよね」
佐藤「僕らしかできないものを作ろうと意識しているわけじゃなく、結果として出来上がったものが僕らの音楽になっちゃっているわけで。〈こうしよう〉ってめざしたのに、何でかこんなふうになっちゃったなぁ……って部分がやっぱり個性なんだと思いますね。線からはみ出ちゃった部分というか、予定していたけど間違っちゃった部分というか」
――しかしこんな素晴らしい新作も作り上げたわけで、今後の自分への期待が膨らんでいたりしない?
佐藤「膨らんでますよ! ただモチベーションを維持するというか、ハイテンションでいることって難しいですよね。突き詰めていくほどにできないことも見えてくるし、いつまでも舞い上がってばかりいられなくなる。でも音楽は楽しいもので、常にトキメキを与えてくれる。そのトキメキの種類もいろいろと変わっていくでしょうけどね。とにかく僕らはただただ音楽を作っていくだけです」
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