インタビュー

INTERVIEW(4)――全力なことに変わりはない

 

全力なことに変わりはない

 

――プロデューサーの箭内道彦さんは、曲作りにも関わっている?

「はい。そもそもこの曲が出来るきっかけが箭内さんなんですよ。実は2か月かけて作った別の曲があって、みんなにも聴いてもらって、いい感じの手応えを感じていたところに箭内さんから電話が入って。〈台本を読んで、高橋優の求められているものを一生懸命に考えて作ったんだろ?〉って言われて、〈そうです〉って言ったら、〈そういう真面目なのも悪くないけど、1回それは置いておいて、たぶんドラマでは使われないけど、フラットな気持ちで楽に1曲作ってみて〉って言われたんですよ。それで、楽に30分でこれを作ったんですよ。そしたら大逆転でこれに決まっちゃった。僕もすごく好きな曲だったし、箭内さんも喜んでくれて、〈今日もずっと聴いてるよ〉っていうメールを何回も送ってくれて。レコーディングの時もスタジオに来てくれて、僕の歌を聴いて、ここの〈だろう〉はちょっと調子に乗って歌っただろ、とか、歌い慣れた感が出て嫌だな、とか言って(笑)。歌も箭内さんの意見が加わって歌ったので、〈作詞作曲/高橋優〉だけでいいのかなっていうぐらい。〈きっかけ/箭内道彦〉って書かなきゃいけないかなって(笑)」

――そういうエピソードも、さっきの〈誰かと繋がりたい〉という話と繋がっている気がしますね。正直、高橋優の歌を最初に聴いた時は、我が強くて、〈俺の歌を聴け〉的な、そういうシンガーなのかなというイメージもあったんですけど、こうやってお話をしていて、かなり印象が変わりました。

「逆に、我が強くてゴーイングマイウェイな人がうらやましいですよ。僕の場合、やっぱり人の目を気にしちゃうんです。〈世間体なんてカスだ〉とか歌ってますけど(『僕らの平成ロックンロール』に収録の“駱駝”)、そうやって歌うのは世間体を気にしてるからだと思うんですよ、たぶん。世間体でいっぱい悩んだりしてるから、大声上げてそうやって歌わなきゃいられなかった気がする。だからその逆というか、みんなが言ってくれる意見もプラスにしていくことがいいことだろうなと思っていまはやってるんですけど。やっぱり、人の目って怖いんですよ。でも人の意見を怖がってたら歌えないじゃないですか。だから一人でも多くの協力してくれる人の言葉をちゃんと聞いておかないと、と思ってます」

――もっと悩むのが見たいというわけではないですけど、この曲は間違いなく売れると思うし、それで賛否両論がワーッと押し寄せて、そのあとに出してくる曲がどういうものなのか。これからの高橋優にものすごく興味があります。

「もし聴いてくれる人が増えるなら、自分のなかでもピリッとしたものが増えると思うし、もっと〈自分が届けたいことは何だ?〉って突き詰めると思うんですよ。それがたとえばラヴソングであれ、何かテーマが設けられた曲であれ、全力なことに変わりはないと思います。全身全霊をもって、聴いてもらうこと、歌っていくこと……それは札幌の路上で初めて歌った時に、1週間毎日来てくれた人の労力みたいなことが忘れられないので。そういう方が増えるんだと思ったら、余計ピリッとしますよね。あの1週間毎日来てくれた人が、何千人何万人になっていくんだとしたら、こっちも毎日歌うぐらいの気持ちでやっていきたいですね」

――今日はありがとうございました。ところで最後に、絶対行きたくなかったという東京にいま住んでますけど、やっぱり好きじゃないですか。

「いまは大好きですよ(笑)。そう思っていたのは、僕がちょっとひねくれてるところがあったからなんですよね。人との出会いも多いし、服のお店もおいしいものを食べるお店もいっぱいあるし、僕は映画が大好きなんですけど、地方でやらない単館系の映画も観れるし、いまとなってはすごい東京が好きですね。来て良かったなと思います」

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掲載: 2010年11月10日 18:00

更新: 2010年11月10日 19:26

インタヴュー・文/宮本英夫

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