LONG REVIEW――踊ってばかりの国 『悪魔の子供/ばあちゃん』
5人編成となってからの初作であり、さらには初のシングルで両A面となれば、どれだけ気合の入った作品を届けてくれるのかと思いきや、“悪魔の子供”も“ばあちゃん”も、拍子抜けするぐらい肩の力が抜けたポップ・ナンバー。まあ、〈若さゆえの初期衝動〉とは意識的に距離を置くことを前提としたアウトサイダー気質のバンドだけに、むしろ当然の展開と言ってもいいのかもしれない。土臭いカントリー・テイストを関西出身のバンドが鳴らしたときに生まれる固有の土着感、楽曲の持つ平熱感からは、くるりの近作を思わせる部分もあり、アウトサイダーとしてスタートした関西バンドとしてのリンクを感じさせるが、さまざまな逡巡を経ていまの表現に辿り着いたくるりに対し、若くしてこの音を鳴らしてしまう踊ってばかりの国には、末恐ろしい大器のような感がある。
一方、ボーナス・トラックとして収録された現時点での代表曲の一つ“バケツの中でも”は〈ハンバーグハンバーグ・ヴァージョン〉として大幅にリメイクされ、極端に音数を絞ったドローンと言ってもいいぐらいのサイケデリックな音像のなかで、下津がアントニー・アンド・ザ・ジョンソンズとアニマル・コレクティヴを行き来するような存在感抜群のヴォーカリゼーションを披露している。この20分超えのディープな大作は、下津の表現者としての成長を感じさせるに十分な仕上がりだ。次はあっけらかんとした表題曲のポップ・ポテンシャルと、ボーナス・トラックで顔を覗かせているエモーションを併せ持ったような新境地を期待したい。彼らなら、できるはず。
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