LONG REVIEW――XA-VAT 『XA-VAT』
11月16日に行われた原宿アストロホールでのカッコーとの2マン・ライヴ、そして12月2日の恵比寿LIQUIDROOMでの単独公演が軒並みソールド・アウトするなど、各方面から注目を集めているXA-VAT。SADIE PINK GALAXY(SPEECIES)、Kozi(元MALICE MIZER)、石井秀仁(GOATBED、cali≠gari)、小間貴雄(元GOATBED)という異色のメンバーによって構成されたこのニュー・バンドが、12月2日のライヴと同日に初のCD音源となる『XA-VAT』をリリースする運びとなった。
サイバーパンクを標榜していたSPEECIES、B級のテクノ・ポップ/ニューウェイヴ道を邁進していた GOATBED、そしてゴシック~ロココなヴィジュアルとクラシックを採り入れた音楽性で話題を呼んだMALICE MIZER。ヴィジュアル面においても、サウンド面においても一見バラバラな組み合わせだが、蓋を開けてみれば、タイトな4つ打ちとマリリン・マンソンあたりを彷彿とさせるヘヴィーなギター・リフと煽動的なヴォーカルが入り乱れるカオティックなグラム・エレクトロ“ZEROTICA”、そして加速するハンマー・ビートが血流をどんどん上げていく“XANADOoM”と、『XA-VAT』はオフィシャルサイトにあるようなバンドのシャープでアーティーなイメージがダイレクトに伝わってくる、ストレートでグラマラスなエレクトリック・サウンドに見事に統一されている。特典音源となるファンキーで淫靡な匂いの漂う“NUMANS-ROXETTE”の岡村靖幸によるリミックスも、バンドの個性に負けない仕上がりになった。
メンバーのそれぞれの個性的なサウンドがシームレスに融合されたのは、エレクトロという、あらゆるジャンルを呑み込む融通無碍なサウンドがハブとして有効に機能していたことが大きいだろう。また、エレクトロ・ブーム以前にシーンを賑わせたエレクトロクラッシュのデカダンなイメージが、パンク、ゴシック、グラムというバラバラだったアーティストのイメージを殺すことなくまとめ上げている。
エレクトロの影響化にあるアーティストはいまでは珍しくもなくなったが、その中でこれだけステージ映えするビッグなサウンドとイメージを打ち出すアーティストは希有であり、その点においても注目すべき存在だと言える。その華やかでド派手なサウンドで、日本のエレクトロ・サウンドに揺さぶりをかけてほしいところだ。