INTERVIEW(2)――自分たちがAnyなんだ
自分たちがAnyなんだ
――確かにAnyの音楽は〈歌〉がしっかり真ん中にあって。
工藤「うん、そうですね」
――ここ数年、変拍子やトリッキーなコード進行を使うバンドが増えているなか、非常にオーソドックスなスタイルですよね。
工藤「まあ、そうですよねえ……(と大森のほうを向く)」
大森「そうだと思うよ(笑)」
工藤「周りにそういうバンドがたくさんいたし、自然とそっちには行かなかったというか。毛嫌いしてるわけではないし、オーソドックスな音楽のほうが売れそうなんて思ってるわけではなくて、〈自分たちが感じてることを素直に表現して、メッセージを届けるには?〉って考えていった結果なんですよね。あと〈みんな個性が強すぎるから、個性がないほうが逆に個性的かも〉って思ってたんですよね、いちばん最初は」
――なるほど。Anyの音楽が新鮮に感じられるのは、そういうことかも。表面的なインパクトに頼らないというか。
工藤「刺激だけの音楽であれば、この3人で演奏する意味はないですからね。それよりも10年、20年、30年経っても〈いいよね〉って言える、誇っていられる音楽をやりたいって。そういうことは3人でも話したし」
――それが共通認識だったわけですね。
工藤「演奏やアレンジももちろん大事なんですけど、いいアーティストっていうのは、ちゃんと歌が残ると思うんです。奇を衒わなくても、ちゃんとした歌があれば成長していけるじゃないかって。だから、シンプルなんです。〈歌と歌詞がちゃんとしてれば、問題ないよね?〉って」
高橋「僕、音楽を聴いてるときって基本的にドラムに意識がいっちゃうんですよ。でも、歌のいいアーティストの曲って、ドラムを聴かなくなってる瞬間があって。そういう状態をめざしてるのかもしれないですね。歌を活かすためのドラムというか。まあ、工藤くんの歌がいいから、なんですけど」
工藤「……コメントのしようがない(笑)」
――(笑)でも、そうですよね。工藤さんの歌に惹かれてるからこそ、いっしょにバンドをやってるわけで。
高橋「そうですね」
大森「うん」
工藤「(笑)そのなかでも〈どうやったらいいんだろう〉って考えてた部分はあったんですけどね、もちろん。でも、今回の作品(『宿り木』)でそれも全部なくなったというか、ある意味、Anyっていうものを探さなくなったんですよね。自分たち自身がAnyなんだって自覚できたし、距離を感じなくなった」
――Anyは自分たちそのものだ、と。
工藤「そうですね。素直に感じたことしか歌ってないし、背伸びもしてないつもりなので。いままでインディーズで2枚(『102』『羽のさなぎ』)、メジャーからシングル2枚(“優しい人”“落雷”)を出してるんですけど、〈日々、成長していかないといけない〉っていうことをずっと感じていて。インディーズの最初の作品なんて、高校を卒業してすぐに出してますからね。それから自分たちもいろいろなことを考えてきたし、たくさんの人たちとの出会いもあって。何て言うか、もっとちゃんと生きなくちゃいけないと思うようになったんです。悩んでることや葛藤していることも含めて、いまの自分を受け入れながら生きていきたいっていう……」
――工藤さんの思考の跡だったり、そこから生まれた思いっていうのは歌のなかにしっかり出てますよね。弱さや逃げたいという気持ちも認めながら、いまの自分と向き合ってて。
工藤「そうなんですよね。いまは自分たちの表現に自信を持ちはじめてるんですけど、それもこの先、潰されるときがくると思うんです。そこからまた再生して――それを繰り返すことによって、バンドの色もどんどん出てくるんじゃないかなって。自分たちの成長がバンドの成長に繋がる。そういう意味では、周りを気にするんじゃなくて、〈自分たちにできることは何だろう?〉って考えるしか方法はないと思いますね」
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