Any 『記憶喪失』
[ interview ]
新曲“エヴリィ”がUSENインディーズ総合ランキングで28週連続ランクインを果たすなど、その存在が確実にクローズアップされている3ピース・バンド、Any。その“エヴリィ”を含むミニ・アルバム『記憶喪失』にも、現在の彼らの状態の良さがはっきりと表れている。とことん自分と向き合い、物事の本質を抉り出す歌詞とメロディー、そして、深い精神性を帯びた歌を支えながら、ロック・バンドとしての強さ、しなやかさを体現するバンド・サウンド。みずからの音楽性を極限まで突き詰めつつ、同時にポピュラリティーも獲得する――そう、Anyはいま、まさに理想的な環境を生み出しつつあるのだ。
いまを生きる
――Anyの音楽の深さ、豊かさがストレートに伝わる作品だと思います。これはかなり手応えがあるんじゃないですか?
工藤成永(ヴォーカル/ギター)「確かなものを作れたな、という実感はありますね。決して派手な音作りとかではないんですけど、なんて言うか、『宿り木』(2010年のファースト・フル・アルバム)のときに比べると、さらに自分自身に向き合えた気がするんですよ。曲を作ってるとき、アレンジしてるとき、レコーディングしてるときにもそれぞれいろんなことを感じられたし、いまでもいろんなことを考えさせられるんですよね。1曲1曲、日に日に意味が強くなってるというか」
――まだ続いてる感覚なんですね。
工藤「そうですね、ずっと考え続けてるというか」
大森慎也(ベース)「Anyの音楽って、ジャンル的には王道だと思うんですよ」
――歌が真ん中にあって、オーソドックスなバンド・サウンドが基調になってますからね。
大森「だけど、ただキレイにまとまってるわけじゃなくて、どこかに引っかかる部分があると思っていて。今回はそれがさらに強く出たんじゃかなって。自分たちの曲に対する気持ちも、どんどん強くなってるし」
高橋武(ドラムス)「ひとつひとつが濃くなってるんですよね」
工藤「作業としては、『宿り木』のときに考えていたことをさらに深めていった感じなんです。その結果、〈いまを生きる〉ということに対してもっと向き合っていったというか」
――“エヴリィ”も、まさにそういう曲ですよね。〈いま、この瞬間の感情を知りたい、大事にしたい〉という思いが伝わってきて。
工藤「この曲、もともとは高校生のときに作ったんですよ。まだ、前のドラマーがいたときなんですけど」
大森「まだ(オリジナル曲が)10曲もなかった頃ですね。大会(2007年に行われた〈YHMF 2007/横浜ハイスクールミュージックフェスティバル〉)でグランプリを獲って、そのすぐ後くらいに出来た曲です」
工藤「ちょっと忘れたところもあるんですけど、スタッフの方が僕の携帯プレイヤーのなかからこの曲を見つけて〈これ、やろうよ〉って。最初は〈ちょっとイヤだな〉って思ったんですけど(笑)、改めて聴いてみて、〈あ、いい曲だな〉って思えて。好きになれなかったら、やっぱり歌えないですからね」