INTERVIEW(2)――自分自身と向き合わなければ
自分自身と向き合わなければ
――当時、どんなことを思って書いたんですか?
工藤「あの、サビのところで〈会いたくてもうダメになりそう〉っていう歌詞があるんですけど、最初はそれがすべてだったというか、単純に〈会いたい〉という気持ちを歌ってたと思うんです。でも、歌詞を書き直していくなかで、より深いところまで考えて……さっき言った〈いまを生きる〉ということにも繋がるんですけど、僕が出会いたいと思ってたのは、その人が感じてること、思ってることだったんじゃないかなって。その瞬間の感情に出会いたい、というか」
――〈いまを生きたい〉とか〈その瞬間の気持ちに出会いたい〉ということを追求してしまうのは、どうしてだと思います?
工藤「ずっと考えていたことだとは思うんですけど、もうひとつは地震のことも大きいと思います。あの体験が〈生きる〉ということに執着を持たせてるんじゃないかって。“エヴリィ”を書いたのは高校生のときだし、歌詞を書き直したのも震災の前ですけど、歌うときに込める気持ちには、確実に影響してると思いますね。悲しいことですけど」
――あれだけ悲しい体験をしないと、生きることに執着できない、という言い方もありますからね。そういう話って、普段からしてるんですか?
工藤「してますよ。というか、そういう話でバンドが保ててるところもあるかも」
高橋「Anyにとってはいちばん大事なコミュニケーションですからね。工藤君がどういう気持ちで曲を書いてるかっていうのも気になるし」
工藤「そうなんだ(笑)?」
高橋「そうだよ。今回のアルバムは、ホントに気になる曲が多いんですよ。それはつまり、工藤君の内面が見えるということなんですよね。内面がもっと掘り下げられているからこそ、気になるっていう……こういう言い方すると(工藤は)気に入らないかもしれないけど、それはある意味、成長した部分だとも思うんですよ」
工藤「(笑)曲を作るっていうのは特別なことじゃなくて、自分にとっては生活の一部なんですけどね。たとえばこうやって人と話していることが、そのまま曲に活かされることもあるだろうし。生活のなかであたりまえに感じていることを書くと、それが曲になるというか……ただ、僕の場合はちゃんと向き合わないといけないんですよね、自分自身と。そうしないと、生きていくってことがよくわかんなくなる」
――考え方が変わったり、認識が深まると、自然と歌の内容も変わってくる。
大森「歌詞は毎回変わってると思いますけど、特に今回は大きな変化を感じていて。詞先になったっていうのもあると思うんですけど、歌詞がすごく入ってくるんですよね」
工藤「楽器を使わなくなってるんですよ。“サナギ”はギターを弾きながら作りましたけど、(楽器は)必要ないし、むしろ〈ジャマになるな〉って感じることもあって。歌詞を書いてるときに自然とメロディーがつくことがあって、そういうときってギターを弾きたくなるんですよね、楽しいから。でも、それよりも自分の気持ちをちゃんと確かめるほうが先だな、と」
――なるほど。ただ、たとえば“エヴリィ”はたくさんの人に聴かれてるわけじゃないですか。それはポップスとして優れてるってことでもあると思うんですけど、そういうことは意識してない?
工藤「あー、そこはあんまり考えてないですね。むしろ、〈ポップだね〉って言われることがイヤだったんです、以前は。いまは違うんですけどね。〈それがおまえの力じゃないか〉って言われて、〈あ、そうか〉って諦めたというか。
――諦めた、って(笑)。自然に出てくるものなんだし、それは良いことなんじゃないですか?
工藤「そうなんですよね。結局、自分から出てくるものには素直に従うしかないんだなって。だから、いまは〈ポップ〉って言われても大丈夫です。それは聴いてくれた人の評価だし。大事なのは、自分たちがやりたいことをしっかり提示できてるか、ということなので」
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