INTERVIEW(2)――景気良くしたかった
景気良くしたかった
――サウンド面で言うと、今回は丁寧に構築していくことよりも、勢いとか突き抜け感みたいなものを大事にしている印象でした。
ALI-KICK「それはまさにDJ TOKNOWくんの担当領域ですよ」
――DJ TOKNOWさんのトラックだと“ロマンクルーのテーマ”はこれまでのソウルフルな要素を継承しつつ、かつてない勢いで突っ走ってますよね。ある種の馬鹿馬鹿しさすら感じるというか(笑)。
DJ TOKNOW(DJ/トラックメイカー)「いままでは、ああいう突き抜けたトラックがあったとしても選ばれなかったかもしれないですね。自分も端正でスタイリッシュな方向性のトラックがカッコいいなと思ってたし。でも今回は〈あ、これ選ぶんだ〉ってことが結構あった」
――なぜそういうトラックが選ばれたんですかね。
DJ TOKNOW「自分が推したってのもあるんでしょうけど……」
ALI-KICK「なんでだろうね」
DJ TOKNOW「でも実際に出来上がってみて、こういうトラックでもみんなのラップがハマるんだなという。それは発見でしたね」
――ALI-KICKさんはトラックを作るにあたってどういうことを考えましたか。
ALI-KICK「今回もたくさん作りましたけど、結局シンプルなものが残ってるんじゃないかと思いますね。ビートだけでもOKくらいの、シンプルでいて力強いもの」
DJ TOKNOW「これまでは2人の音が結構明確に分かれてたんですけど、今回はどっちが作ったのかクレジットを見ないとわからない曲が多いって言われますね」
――全体的にゴツゴツとしたファンキーなトラックが多いですよね。まさにビート勝負と言うか。これまでにあったメロウな要素は、今回はあまり打ち出してないように感じました。
ALI-KICK「メロウにすると言葉が沈んでくるんですよ。それを避けたくて、メロウなトラックは使わなかったということなんじゃないかと自分では思ってます」
将絢「とにかく景気良くしたかったんですよね。3年かかった末に〈苦労した~〉みたいなことは言いたくなかった。そりゃ言わなくてもわかるというか、苦労してなかったらもっと早く出せてますからね(笑)。だから、ネガティヴなことを言うにしても最終的にはポジティヴな言葉が残るようにしたり、あるいはトラックを明るくてバカみたいなものにしたり」
――そういうエンターテイメント感は全編に漲ってますよね。“ラップダンス”なんかもかなり無礼講感のあるパーティー・トラックで、この軽い感じはこれまでにはなかったと思います。ROMANCREWはブラック・ミュージックに対する愛情をかなりストレートに打ち出してきたグループだと思うんですけど、そのスタンスもちょっと変化してきてるのかなと。
ALI-KICK「いままでは〈スーパー・クロイ〉というコンセプトを立ててブラック・ミュージックへの愛情を込めたり、〈黒いグルーヴ〉というものをものすごく追求してたんですけど、今回は一切考えてないんですよね。自然に作れたし、別に〈黒い〉と言われなくてもいいかなという」
エムラスタ「もはや(黒いグルーヴが)染み付いたって感じですかね。これまでは黒いグルーヴ感をすごく細かいところまで掘り下げて作っていたんですけど、いまはブラック・ミュージックをもっと大きく、余裕を持って捉えられるようになったのかもしれない」
▼ROMANCREWの課外活動作品