INTERVIEW(4)―― 一度言い切っちゃってもいいんじゃね?
一度言い切っちゃってもいいんじゃね?
――“絶滅危惧種”は、自分たちを絶滅危惧種になぞらえたうえで、世間に対して物申してる部分もあるし、逆に自分たち自身に言葉の矛先が向けられるような、自嘲的な部分もある。単にポジティヴなんじゃなくて、ブルージーでありながら、それでも前に進もうというところがグッときます。このアツい感じはいままでになかったかなと。
ALI-KICK「厳しい時代ですから、やっぱりある種の諦念は持たざるを得ないですけど、そういう状況下でどう音楽を続けるかがいちばん大事で。それはこの3年間のなかで培った気持ちですね。だからこそのブルースというか、それだけの経験をしたからこそ最終的には前向きな言葉が出てきた。ファーストやセカンドの時点で今回みたいなリリックだったら嘘臭かったと思いますし」
――特に最後の“TALK”はいちばんストレートにメッセージを届けようとしてますよね。
ALI-KICK「〈真面目にいいこと言うのサムいね〉みたいな風潮はずっとあると思うんですけど、〈一度言い切っちゃってもいいんじゃね?〉っていうのがこの曲のコンセプトなんですよね。それもシンプルなコード進行とシンプルなビートでやってみた」
エムラスタ「物事を斜めに見ることも大事だし、それでこそ楽しめることも多いと思うんですよ。でも根底のところで何かを信じてないとダメだし、それでこそ角度を変えて遊ぶことができる。今回のアルバムでは冒頭から11曲目の“スポットライト”までで、いろんな視点を僕らのほうから提示できたかなと思うんですけど、最後の曲に限っては、なんと言われようとストレートに締め括ろうと」
――いまの日本語ラップのシーンでは、現行のUSのサウンドをストレートに採り入れたものが主流なのかなと思うんですよ。でもROMANCREWの音は違いますよね。
ALI-KICK「ファーストとかセカンドでは、いちばん新しい音でありたいなと思ってたんですよ。でもいまはいろんなスタイルの音が混在している状況で、ひと口にアメリカのメインストリームと言っても、モノによって全然違う。新しいも古いもなくなって、本当になんでもアリになってる。そのなかではスタイルとか音色よりも音質が大事なんじゃないかなと思ってるんです。凄いバスドラがひとつドーンと鳴ってれば、それだけでOKみたいな。低音の鳴り方がフレッシュとか、そういう音楽もありますし。まあそのへんはいまも実験中だし、わかりやすく伝わることではないのかもしれないですけど」
―― 一方で、アンダーグラウンドなところでは、すごくローファイな感じのビートを作る人たちがいますけど、そういう音とも違う。
ALI-KICK「ローファイではないですね。むしろ結構ハイファイな音になってると思うんです。いまはケータイとかPCの小さいスピーカーとかで音楽を聴いてる人もたくさんいますよね。でも〈鳴り〉の部分を追求することで、もっといいスピーカーで聴いてくれる人が増えていくんじゃないかなっていう。まあ小さな抵抗ですけど」
――なるほど、じゃあ今回のアルバムをどう聴いてほしいかと言うと……。
ALI-KICK「できるだけデッカイ音で聴いてください!」
エムラスタ「てことですね」
――いい締めですね(笑)。