インタビュー

INTERVIEW(3)――常に自分が飽きてないと

 

常に自分が飽きてないと

 

──次の“危険なうわさ(淑女仕様)”は、かなり以前からあった曲なんですよね。

マリアンヌ「そう、これはすごく前に作った曲で、初代メンバーの頃からある曲。ライヴでやっててもこの曲が好きだと言われることが多くて。で、なんで今回録ろうと思ったかというと、去年の12月ぐらいにスタジオでなんとなくこの曲をやっていたときに、基本的にはベターっとオルガンを弾いてるところを、なんとなくの思い付きでリズミカルなピアノに差し替えてみて。でも難しいし、元々ピアノなんか弾けないから、実際にライヴでやるのは絶対無理って思ったんだけど、でも、なんだかそこに挑んでみたくなって。こういうアレンジにし直したことで軽やかになったし、違う味が出てきたなと思ったので、これを詰めてみようかなと思ったんですね。そしたら次の週、エマニュエルがピアノのフレーズに合わせてベースラインを変えてきてくれたの。そういうのって非常に珍しいことなんですけど(笑)、だったらとことん詰めていこうって。ピアノの音色を使って録音するのは初めてだったので、〈こうするわよ〉って言ったはいいんですけど、この曲は私がいちばん苦労した曲」

──珍しいことがあったっていうことですけど、今回のアルバムを作るにあたって、ひとつ高いハードルを越えなくちゃっていう意識が自然とメンバーのなかにあったってことですかね。

マリアンヌ「やはり自分自身のモチヴェーションを高めたいという気持ちがあって、自分がキノコホテルに飽きてしまいたくない……結局ひとつのバンドだから、いろんな人がキノコホテルを好きだと言ってくれていてありがたいんですけど、好き好きって言っててもいずれは飽きられてしまうと思うの。だからこそ、それより前に常に自分が飽きてないといけないと思っていて。人より先に飽きて、〈ああ退屈〉と思って新しいものを作るってことを繰り返していかないと、やはりこのバンドをやってること自体に飽きてしまうので。そういう意味では、メンバーにも士気を高めていただきたいっていうのがあるし、バンドとして常に新鮮な気持ちを持ってやっていきたい気持ちがあったから、自分のために、バンドのためにこういうものを作ったという意識もなくはないですね」

──若干、聴き手を置き去りにするぐらいの気持ちでやっていかなきゃってことですよね。度が過ぎるとあれですが。

マリアンヌ「そうですね、そうなると誰もついてこられなくなるから。今回のアルバムは、以前のキノコホテルを知ってくれてる人が聴いても、わけのわかんない方向に行っちゃったなとは感じないであろうバランス感覚があると思います。インプロヴィゼーション風なものが入っていても従来のキノコホテルのようなノリの曲も入っているので、まあ、変わってしまったというよりは幅を広げただけって感じかしら」

──さきほど話に出た“風景”に続いては、一転してワイルドなビート・ナンバー“キノコノトリコ”。

マリアンヌ「前の曲から現実に戻される感じというか……これは単に覚えやすくてスピード感があってキャッチーな曲を作りたかったというだけで。深い思いみたいなものはほとんどなくて、極めてシンプルに、まあ、数分で考えて作った曲なんです(微笑)」

──“人魚の恋”は、キッチュなサーフ・ナンバーとでも言えばいいんでしょうか。これは2年前に書かれた曲だそうですね。

マリアンヌ「これはまあ、ケメが入ったときに入社祝いとして彼女のために書いた曲なんですね。サーフ系のギターが好きだと言っていたので、サーフなんて全然わかんなかったんだけど(笑)、こんな感じかしら?と思いながら作って」

ケメ「もちろん好きなタイプの曲なんですけど、いただいた当時は難しくて弾けなかったんですよ。だから、すごくがんばった記憶がありますね。この曲では、このあいだ寺内タケシさんからいただいたモズライトを使ってます」

マリアンヌ「ケメもまだソロでアコギの弾き語りを活動のメインに据えていた頃だったから、エレキも久しぶりだし、あまり自信がないみたいなことを言って入ってきたんだけど、これぐらいだったらできるでしょうっていう曲を書いてあげて。難しかったとはいえ、できたから良かったんじゃないかしら。ギターの見せ場みたいなものもこの曲でできたし」

 

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掲載: 2011年03月30日 20:59

更新: 2011年03月30日 21:00

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