インタビュー

INTERVIEW(4)――起承転結がある一枚

 

起承転結がある一枚

 

キノコホテル_A1

 

──“荒野へ”は、ちょっとオシャレなポップスですね。ブルースっぽくもあり、クラシックっぽくもあり。

マリアンヌ「ハープシコードをメインに使っているので、ライヴで歌いながらこれを弾くのはちょっと無理があるけど。ただ、曲を作った段階で、ステージでの再現は考慮せず、こういう仕上げにしようという構想は初めから私の頭のなかにあって。もともとキノコホテルには、『マリアンヌの憂鬱』に入ってる曲だと似非ボッサちっくな“還らざる海”とか“夕焼けがしっている”とか、ああいったスロウテンポで切ない曲もあって、それはそれで結構支持していただいてる曲なんですけど、ただ、それらと同じような曲をそのあと書く気はなかったんです。でも、こういう曲をやってしまうのも結局キノコホテルなのよね、ということで入れてみました」

ケメ「うん、これは良い曲。ギターが上手そうに聴こえるような弾き方を勝手に意識しながらやっている曲だし(笑)」

──うんうん、リスナー目線で惚れちゃう曲っていうのも当然ありますよね。

ファビエンヌ「そういうことでは、次の“愛人共犯世界”が私は好きで。だから、ライヴでもこの曲やりましょうって、ネジ込んだりしてます(笑)。支配人の尖った感じっていうのが私はすごく好きなんですよ」

エマニュエル「私も好き。ライヴのときの支配人の狂気じみた歌い方とか、その横で弾いてるのもすごく楽しいし」

マリアンヌ「その横で冷静に弾いてるものね(笑)。そうなんですよ、これは精神的に荒れ狂ってる時に作った曲で、そういう気分が曲に活かせて良かったと思います(笑)」

──それにしても今回のアルバム、最終的にひとつにまとめあげるのが、前作以上に大変だったように思うんですが。

マリアンヌ「一枚の作品として成立させることができるのかしら?って思うぐらい多彩な顔ぶれで、最初はどう並べていいものかと思ったんですけど、最終的にはちゃんと締めるところは締めてるし、起承転結がある一枚になったと思うの。というかまあ、この4人でスタジオにいた時間よりも、そのあと自分ひとりでスタジオに入って、エンジニアさんとディレクターと缶詰で仕上げていった作業のほうが長かったんですね、今回は。そういう孤独な作業を強いられたなかで、自分で考えてやってることなのに途中でわけがわからなくなるということを初めて経験したぐらいで。3人には先にやることをやっていただいて、そこから先はわりと自分の好きなようにしてみたいと思って、私ひとりのパートに関しては結構作りながら録っていった部分もあったので、他の3人は出来上がるまでどう仕上がったのか全然わからない、想像できない部分もあったんじゃないかしらね。そういった意味では思い入れというよりも、全部の作業が終わったときにはもう真っ白になっていて、このアルバムをしばらく客観的に聴けなかった。良いものを作ったという自負はあったんですけど、それをこう自分が客観的に聴けるまでにはすごく時間がかかりましたね」

──ステージでは再現しにくい曲が多いだけに、ライヴは楽しみですね。

マリアンヌ「でしょうね。まあ、そもそもCDをそのまま再現する必要もないわけで、ステージはステージで視覚的な要素もあるから、そういったものが手伝ってどっちみち違うものにはなるし、どっちが良いではなくて、両方良いのがキノコホテル……というか、むしろこうやってかっちり録ったものをステージでどれだけ良い意味で汚していくか、荒らしていくか、そういうのが個人的には好きなんです。最近はステージもわりと凶暴な方向に……自分が主にそうなってるんですけど(笑)、キノコホテルって最近アグレッシヴだねとかコワいねとか言われたりしながら、そういう感じでやっていくなかで、音源はコワくもなんともないし、ただ良い曲が並んでいて、演奏も良い。凶暴さはアルバムで強調しないで、さらっとスマートに、聴きやすい音のレヴェルとかで録ったうえで、ステージでは全然違う面を見せる。どっちを取っても良いものを届けるということが、キノコホテルで私がやりたいことなんだろうなという感じかしら」

 

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掲載: 2011年03月30日 20:59

更新: 2011年03月30日 21:00

インタヴュー・文/久保田泰平

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