INTERVIEW(2)――ダークなのは、いま現在
ダークなのは、いま現在
──『subliminal』と今作を比べていちばん感じたのが、今回はすごく暗いってことなんです。
「暗いですよねえ!」
──“Capacity”がいちばん顕著だと思う。なんでこんなダークになったんだろうと。
「ああ、ダークなんじゃないですかね、いま現在が。そういうふうに自分が感じてる。世の中の物事が進んでいくスピードがものすごく早くて、それが良いのか悪いのか判断する前にどんどん進んでいってるから、問題がどんどん山積みになってるような状況で」
──具体的にどういうところで感じます?
「うーん、はっきりとは説明できないんですけど、いちばん大きいのはネットワークだと思うんですよね。ネットワークが発達していろいろ変わってきた。それが生活とか考え方を変えてる部分がかなりあると思う。音楽業界で言えば、ネットワークが発達したことで人々のCD購買意欲に影響が出て、カルチャーのほうになかなかお金が流れてこなくなってきた。それでいままでのカタチとは変わっていくと思うんです。それは自分の身の回りのほんとに小さなことだけど、もちろん問題はそれだけじゃない。例えば実際に会わなくても関係が成立しちゃうような風潮とか……事態はどんどん進んでいってしまう。個の不安というよりは、社会全体の問題ですね……自分の世代はいいけど、子供たちはどうなるんだろうって」
──漠然とした未来への不安。それは『liminal』からも感じますね。
「ぼくだけじゃなく、同じようなことを感じて、それをアウトプットする人も結構いる」
──ある種の不安感とか世界に対する危機感というのは、たぶん『LOVEBEAT』の頃もありましたよね。
「ありました」
──でも今回ほど攻撃的ではなかったし、閉塞的な感じもしなかったですよね。
「うんうんうんうん、そうですね」
──それと、曲を作るとき、特定のヴィジュアル・イメージやテーマが浮かんでこなかったということと、どう結び付いてきますか。
「起きてることを具体的に言葉とかヴィジュアルに変換して、もしくは変換することを前提としてアウトプットすることができなくなってるんだと思います」
──それは現在の状況が錯綜してて、簡単に絵解きできなくなっているということですか。
「そうです。自分でも把握できてないのに表現してる部分がある。でも、なにか感じてて。その感じてるものをアウトプットしてる」
──それを具体的に音にするとき、何を手がかりに、何にフォーカスして作っていく?
「雰囲気みたいなものがいちばん大きいですね。ただ……あんまり求められてないじゃないですか、暗いものって。いまでも世の中暗いことのほうが多くなってると思うけど、でも明るいもの(音楽)のほうが目立ちますからね」
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