インタビュー

LONG REVIEW――アナ 『HOLE』

 

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90年代を通過した渋谷系チルドレンとして、サンプリングを用いた日本語のエレクトロ・ポップを鳴らしてきた福岡出身のアナと、海外の最先端のインディー・シーンを紹介するという方向性から日本のバンドを送り出すレーベルへと変化を遂げつつある京都のSECOND ROYAL。本作『HOLE』は、そんな両者の幸福な融合によって生まれたアルバムである。

その象徴と言えるのが、2曲目に収録された“SUMMERS”。レーベルメイトになったHOTEL MEXICOを筆頭に、今年に入って日本でも多くのバンドが採り入れつつあるチルウェイヴ風のドリーミーなシンセが印象的なこの曲からは、これまでのアナにはなかった海外との同時代性が感じられ、レーベル移籍のひとつの成果だと言える。

しかし、ここで重要なのは、アナがレーベルのカラーを踏まえて海外インディーに傾倒したわけではないということだ。彼らがもともと内包していたメランコリックな世界観と、チルウェイヴの持つムードがリンクした結果生まれたのが“SUMMERS”であり、日本語のポップスとしての魅力は少しも損なわれていないどころか、歌詞の美しさはむしろこれまでの作品以上。筒美京平を彷彿とさせるストリングスが印象的な“PLANET”からは、日本人なら誰しもの琴線に触れるであろう普遍性すら感じられるのである。

海外インディー・シーンとの同時代性と、日本語のポップスとしての普遍性。そんな2つの要素を見事に併せ持った秀逸なポップ・アルバム、それが『HOLE』なのだ。

 

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掲載: 2011年04月27日 18:00

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