INTERVIEW(4)――跡形もなく消化する
跡形もなく消化する
――そのバランスを取る過程には、大内さんとNOMAさんはどう関わってました?
NOMA(ドラムス)「何かを話したり要求したりというよりは……あの、このアルバムを作る前に、サポートでベーシストを入れたんですよ。それも新しいことで。前は打ち込みベースでやってて、僕は打ち込みに合わせてドラムを叩いてたんですけど、生身のベーシストと初めてやってみて、グルーヴ感がまったく違うことに気付いて。それが3年ぐらい前なんですけど、バンド感を出したいがためにベースを入れたから、ウワモノとかシンセとかを逆に減らしていく作業をしてて、リズム隊がすごい大事な部分になってきたんで、僕は何か言うよりも、言われる側で」
――生っぽいグルーヴが要求された?
NOMA「そうですね。サポートのベースの人は結構その、ファンクとかそっち系を聴いてたりやってたりする人で、そういうグルーヴ感とのバランスを取ろうと、もう一生懸命(笑)、必死になってやってましたね」
――大内さんはいかがですか?
大内「上田くんと大久保でずーっとやり取りしてると、誰だってそうですけど、判断基準がわからなくなるじゃないですか。そういうときに、僕はフィクサー的な立ち位置で上がってきたものを聴いて、〈違うんじゃない?〉〈いいやん〉っていう、その判断をする。〈これは好き〉〈これは嫌い〉って。上田くんと大久保は、夜中じゅうSkypeでお互い顔を見ながら気持ち悪い作業やってて(笑)、そのデータが朝までにはメールで届いてるから、僕が朝起きて聴いて」
大久保「〈ダメ!〉とかね(笑)」
―― 一刀両断ですね(笑)。
大久保「大内は比較的、海外インディーとかはそれほど聴いてない状態で。だから〈戻す〉というか、そういう役割をしてくれましたね」
――そうして出来た9曲ですが、アルバム全体としての大テーマみたいものはありました?
大久保「サウンドとしてのテーマは、さっき言ったみたいなゴチャゴチャな感じ(笑)で、でもアナである、っていう。あとは……SECOND ROYALって、どちらかと言うとコアなレーベルじゃないですか。僕たちが前に所属してた周辺の人たちはSECOND ROYALを知らない人も多かったりするんですけど、そういう人たちにもちゃんと届けられるぐらいまでに消化したものを作ろうっていうのはありましたね。海外インディーに影響を受けた作品って、ホントいっぱいありますけど……」
大内「そのまんまに近いっていう(笑)。ボーダーがなくなってるっていうのはいい部分もありますけど、でも日本人がやる必然性はあまりないのかなあとも思うし」
大久保「HOTEL MEXICOとかは海外でも評価されてるし、海外のシーンに影響を受けたっていうよりも、タイムリーにそれをやってるって感じじゃないですか。Turntable Filmsとかもホント、外人だと思うし(笑)。両方とも〈僕がいま、いちばん好きなバンド〉って言ってもいいぐらいのバンドで、そういう人たちがレーベルメイトとして身近にいるっていうのはすごくいいことだと思うんです。そのなかで僕たちは、ただ単純に日本語でやるっていうんじゃなくて、もう跡形もないぐらい消化するっていうか」
――今回の作品で言えば、海外インディーのようなテイストを採り入れたサウンドで、J-Popのシーンに踏み込んでいくという?
大久保「そうですね。最終的には」
大内「アナがSECOND ROYALから出すっていう必然性はあったんじゃないかなと思うんですよ。レーベル・カラーがありつつも、でもそこでアナの良さがいままでより減ってたりしたら、全然意味がない。最初の〈新人デビュー〉とかいう話と真逆になっちゃうんですけど、アナがいままでやってきたことと、SECOND ROYALがやってきたこと。そのふたつが1枚のアルバムになったもの、というのはすごい意識してやってました」
――そして、本作のタイトルが『HOLE』(=穴)ということで……つかぬことをお訊きしますが、アナの発音って〈ア〉にアクセントでいいんですよね?
大久保「大丈夫です(笑)。まあ『HOLE』というのはセルフ・タイトル的な意味もありますし、過去3作を第一期だとすると、今回のアルバムは3年空いたのもあるし、レーベルも変わったし、NOMAはもう30を越えましたし、さすがにもう、〈大人じゃない〉とか歌えないし……(笑)、そんないろいろを踏まえて、これからは第2期になるんだろうな、って。あとは3年間、暗闇のなかにいた人たちが穴から出てきた、みたいなね(笑)」
――(笑)ともかく、バンドにとっては重要作であり、自信作であると。
大久保「そうですね。〈改めまして〉の、名刺代わりとなるアルバムが出来たな、と思います」
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