インタビュー

ANOTHER SIDE OF INTERVIEW――藍坊主 “星のすみか”

 

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結成から10年以上に渡って、バンドとしての新陳代謝を絶えず繰り返してきた藍坊主。その最新ヴァージョンと言えるのが、ベスト・アルバム『the very best of aobozu』に収録の新曲“忘れないで”と、この項で紹介するニュー・シングル“星のすみか”である。hozzyいわく「頭がおかしくなるくらいこの曲と向き合いました(笑)」という表題曲は、彼らにとっては初となるアニメのタイアップ・ソング。昨年発表した5作目『ミズカネ』のツアー・ファイナルを迎えてからの約半年間、彼らはこの曲にほぼすべてを費やしていたという。

「メロディー、歌詞、アレンジ、共に何度も何度も変えて、皆が納得できるものを1曲に注ぎ込みました。曲の作り方も、藤森からはじめにメロディーの断片をもらって、そこに自分が新しいメロディーを乗せて、それを拓郎と練って、また藤森に渡してメロディーが乗って、自分が練って、ユウイチに渡して、って感じで、ホントいままでの楽曲のなかでも、皆で作っていった感が強い曲です」(hozzy)。

各パートが現れては消える冒頭から、4人が渾然一体となって走り出すサビへ――引きの美学によってスピード感とダイナミズムを増幅したこのギター・ロック・ナンバーは、可憐なピアノを伴って星々が瞬く広大な宇宙を描き出し、その宇宙の歴史のなかに〈生けとし生けるもの〉の過去と現在、そして未来を投影する。

「歌詞は、コンビニで売ってる500円くらいの〈だれにでもわかる物理!〉みたいなのをペラペラ見てたら、〈我々の体は星屑でできている〉ってチャプターがあって〈なるほど〉って思ったところから始まり、上野の博物館に行ったときに観た化石のなかに、もし自分のものがあったらどんなふうに観られるんだろう?って考えたことと繋がったところから出来ていきました。固くて冷たそうな、ディスプレイされた骨たちの記憶を想像するだけで躍動する世界が見える気がします。何度考えても命は不思議です」(hozzy)。

そんなふうに、壮大な時間軸を1曲のなかに封じ込めて見せる一方、カップリングの“花のなはなの花”で彼らが聴かせるのは、陽だまりのように温かな祝福の歌だ。

「いままで曲を作る動機で〈誰かの為〉という気持ちはありませんでした。正確に言うと、作ったことはあるけど世の中にリリースできるクォリティーには至らなかった。俺は、〈誰か〉という目に見えない人に向けると、誰にも響かない曲になってしまう。だから曲作りの出発点は〈自分に向けて〉がほとんど。自分が自分の作ったフレーズで奮い立って、やっと誰かに届くようになる。そんな気がしています」(藤森真一)。

アイリッシュ・トラッドなギター・リフと鼓笛隊風のリズムが軽やかに踊るオープニングから思わず顔がほころぶ――そんな、どこかヨーロッパの田舎の結婚式を想起させる同曲を手掛けた彼は、ここである挑戦をしている。上述の発言とは逆となるが、実はこのミッド・チューンは、友人へのはなむけとして書かれたもの。「自分にもこんなことが言えるのだと、意外な一面が見えた曲」であり、結果的には「自分に響く曲に仕上がりました」と藤森は語る。

その音楽性のみならず、制作の手法や楽曲との向き合い方も含め、自身の可能性を探り続ける4人。個から普遍へと向かう一歩の重みを噛み締めながら、彼らの道程はこれからも続く。その一端をしなやかなポップソングとして凝縮した2曲がつまり、今回のシングルである。

 

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掲載: 2011年04月27日 18:01

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