インタビュー

INTERVIEW(4)――いちばん素直でストレートなドキュメンタリー映画

 

いちばん素直でストレートなドキュメンタリー映画

 

吉村×川口

 

──この映画を観ていると、ブッチャーズというか、吉村さんのハンパない生命力が伝わってきますね。

川口「ですよね。常に緊張感がありますし。ライヴと音作りの時は特に。突然、吉村さんのカミナリが落ちたりするわけですからね。端から見てると、何がきっかけで突然スイッチ入ったんだっていう(笑)」

吉村「曲作りで言えばね、オレがこうこうこんなふうにしたいんだって決めてから作るやり方もあるんだろうけど、いつもそれやってたら楽しくないし、メンバーからどんなフレーズが返ってくるかはいちばん楽しみにしてることだから、自分のやり方を考えないで、受け手にばっか回ってるとやけどをするよ、ってことを3人にはわかってほしいんだよな。そういうやり方でやってるから、スタジオではピリピリしてるというか。他はそうでもないからね。まあ、怒るときは怒るけど」

川口「怒るのは主に、ライヴのリハと曲作りのときですよね」

吉村「もっとヘヴィーなバンドだっているんだから。そういうの実際に見てきたりしてるからね。それを乗り越えていくバンドとか、解散していくバンドとか、いなくなっちゃう人とか、そういうの見てきたし、じゃあ、自分はなんでブッチャーズをやってんだろうって考えるとさ、このバンドのいちばんの楽しい瞬間を知ってるからやってるのかなって。それが基本かな。そういうなかで〈無題〉っていうアルバムがあって、そこからのバンドの1年を切り取って映画にしてもらったという」

川口_1

川口「23年やってきたなかの約1年を追っかけて、映画にするという意味で昔の映像もいろいろひっくるめて作らせてもらったんですけど、ホントその瞬間が撮影できたのは光栄ですね」

吉村「映画館で上映してったら、自分が思ってた以上の返りがあって、それはまあ、言われれば〈どうもどうも〉って言うんだけど、その〈どうも〉はブッチャーズに対してじゃないんだよね。映画に対して〈どうも〉って思うからそう答えてるわけで、たまたま出てるのがブッチャーズだったというか」

川口「いや、ブッチャーズだからこういう映画になったっていうのは確実だと思いますけどね。同じ撮り方、同じようなことをしてても、他のバンドなら違うテーマになってただろうし、これはブッチャーズだからだと思いますよ。ドキュメントでよくありがちなのは、リーダー的な人とか、ソロ・アーティストだとその人が言ってることとかを伝えようって発想とか、解散したバンドだったら解散っていうところにドラマがあったりするわけですけど、そういうわかりやすさというか、ある意味計算されているものが好きじゃないみたいなんですよね、吉村さんも僕も。で、落としどころが見えないままやるのは怖いんだけど、そういう状態じゃないとやろうって話にはならなかったし、まあ、僕はそれに挑む形になったわけですけど」

吉村「正面からメンチきってる画はいらないし、見えてるのは後ろ姿なんだけど、前向きに映すのは監督次第というか。川口くんはそのへんのさじ加減をわかってくれてたから、やりやすかったな。具体的に言葉で語れない部分というかさ、そういう不器用さも理解してくれたし」

川口「吉村さんのインタヴューって、最終的にこちらが解釈しなければいけないっていう。いろんな言葉が放たれていて、文章だと理解したうえで文面に落とせるけど、映像だとそこは難しいから、言葉はなくて画で伝えていくしかない部分があって。吉村さんが多くを語らないぶん、他のメンバーが言葉にしていったのがこの映画なのかもしれないですね。ホントもう、こういう映画が作れたっていうのはブッチャーズだからこそ、ブッチャーズが被写体だったからだと思いますよ」

吉村「そんなことないよ。あなたがまとめたからですよ。出来上がりを観たときの感想として、スゲぇヘヴィーかなと思ったんだけど、意外とあっさりしてるなこれ、みたいな。良い意味でそう捉えたんだけど、なんかこう、こういうふうに送り出していくとおもしろいというか、自分じゃないっていうか、映画なんだなっていうか」

川口「バンドそのものが撮れてるだけだと思うんですよ。ホント、ブッチャーズのような映画。いちばん素直でストレートなドキュメンタリー映画だと思ってるんですけどね、これ」

吉村「僕もそれができて〈ざまみろ感〉がある。だから、やってよかったなあ、参加してよかったなあって」

川口「このドキュメントは、言い出しっぺがアーティストでも監督でもなかったっていうのが良かったと思うんですよ」

吉村「うん、そういうの大事だと思うよ」

川口「ある意味、贅沢な作りをさせてもらった感じですね。お互い、遊びながら戦える場を作ってもらうっていう。これ、DVDで楽しめるということになったわけだから、せひヘッドフォンで聴きながらガッツリ観てほしいですね。僕の撮り方にもよるんですけど、ドキュメントなので映画館だと音の聴き取りにくい部分もあるんですよ」

吉村「うんうん、ヘッドフォンだね」

川口「あと、映画館だと〈観るぞ!〉っていう緊張感がありますけど、家でDVDとなると、いつでもポーズできるっていうこともあるし、緊張感を自分でコントロールできちゃうんですよね。だから、あえてそこはヘッドフォンでガッツリと向かい合ってほしいですね」

吉村「そう、プチプチ感性にヒットしてほしいね」

 

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掲載: 2011年06月08日 18:00

更新: 2011年06月08日 19:08

インタヴュー・文/久保田泰平