インタビュー

Alice Nine “BLUE FLAME”

 

Alice Nine_特集カバー

 

[ interview ]

1月には初の日本武道館公演〈Alice Nine Live Tour 10 “FLASH LIGHT from the past” FINAL “TOKYO GALAXY”〉を開催し、2月には岡野ハジメをプロデューサーに迎えた最新アルバム『GEMINI』を発表。大きな話題を振り撒きながら2011年を駆け抜けている5人組ロック・バンド、Alice Nineが、早くもニュー・シングル“BLUE FLAME”を完成させた。

自身の創造性や実験性を漲らせた楽曲で、ポピュラリティーと対峙した『GEMINI』。名実共にエポック・メイキングとなった同作を通過し、その先を見据えた彼らが今回の新曲に投影したものとは? 将(ヴォーカル)、沙我(ベース)、Nao(ドラムス)の3人に訊いた。

 

シアトリカルな非日常

 

――今回はニュー・シングル“BLUE FLAME”のインタヴューなんですが、今年は1月6日に日本武道館公演〈TOKYO GALAXY〉、2月9日にアルバム『GEMINI』のリリースもありましたので、そこから少し振り返らせていただければと思います。まずは武道館公演についてですが、拝見して思ったのは、演出も含めてすごくシアトリカルなステージだなと。最近で言えば、4月の〈コーチェラ〉でのカニエ・ウェストとか……。

沙我「(鞄からカニエの2010年作『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』を取り出して)これですか?」

――あ、まさにそれですね(笑)。お好きですか?

沙我「かなり好きなアルバムですね。これまではあまり聴いてなかったんですけど、いまおっしゃられたような、どこか映画みたいな、物語みたいに進行していく感じがおもしろいな、と思って。普通に聴いてます」

――あるひとつの世界観をステージ上で構築し、エンターテイメントとして見せるという点ではAlice Nineも〈コーチェラ〉のカニエ・ウェストも私としては同じライン上にあるというか。そういうところは皆さん、意識していらっしゃると思うんですね。

「そうですね。武道館はホントに、応援してきてくれた人たちへの恩返し、記念的な公演であると同時に、これからのAlice Nineを示すような、そのきっかけになるライヴになればいいなと思っていて。それで、さっきシアトリカルと言っていただいたんですけど、確かに演劇と通じるところがあるというか、もちろん生ですごく熱い部分もあるんですけど、お客さんを非日常へと誘うという――そういう部分はこのバンドの強みだと思っていて」

 

ポップとコアの二面性

 

――そして武道館公演の最後に『GEMINI』の折り返し点に位置するインスト“Entr’acte”がSE的に流れてきて、続いて“GEMINI-0-eternal”のPVが解禁となったわけですが、その瞬間に会場の空気がガラッと変わった印象があったんですよね。その『GEMINI』は後半から組曲のような展開もあるコンセプト・アルバムで、バンドにとってはエポック・メイキングな作品だったかと思うんですが……制作中、プロデューサーの岡野ハジメさんに「君たちは自分たちの良さをわかってない」と言われたそうですね?

沙我「言われましたね」

――そのときに改めて見つめ直したAlice Nineの良さ、今後の方向性とはどういったものでした?

沙我「長くやってると、どんどんアートのほうにいきがちだと思うんですね、バンドって。描くものがどんどんこう……より深いものだったり、広いものだったり、内面的なものに寄っていってしまったり。ただ、Alice Nineがそういう流れになると、これまでの僕らとのギャップが開いてしまう」

――とは言え、『GEMINI』はともすればアートのほうに寄る可能性もあったアルバムだと思うんですよね。

沙我「そうですね。そこで、アルバムを前半と後半とに完全に分けたっていうのがあるんですよ。深いもの、壮大なものを描きたいっていう気持ちも、岡野さんに言われた〈らしさ〉も、どっちもひとつのアルバムに込めようと思って」

――その〈Alice Nineらしさ〉に関して、岡野さんから具体的に指摘されたことはなかったですか?

「出会ったときに、〈Alice Nineはもっとボン・ジョヴィみたいなバンドなんだ〉って、そういうニュアンスのことを俺、言われた覚えがありますね。〈そのはずなのに、お前らは斜に構えてる〉って。それは岡野さんが僕らのことをホントに思ってくれて、もっとバンドとして成功してほしい、っていう話の一環だったんだと思うんですけど。僕に関しては、例えば自分のミッドロウの声があまり好きじゃなくて倍音みたいな部分を削っていたんですけど、〈自分の声の良さを全然わかってねえ〉って言われて。〈君の声にはこういう良さがあるんだよ〉って――プロデューサーというよりは兄貴みたいな、人間対人間でぶつかってくれたのはすごくありがたい経験だったし、あと俺としては、〈GEMINI〉(“GEMINI-0-eternal”“GEMINI-I-the void”“GEMINI-II-the luv”の3曲から成る連作)はなんか、理屈抜きでいい曲だったっていう、それだけですね。いまの時代に12分を超える曲をやってるからどうだとか、だから私は格好良いとか、そういうことではなくて。すごく必然的な長さだし、マーケットには合わないとかあるのかもしれないですけど、僕らにとっていい曲が出来てしまったから……ただそれだけで」

――あのアルバムは、〈GEMINI〉が最初にあって、そこから広がっていったんですか?

「もともとは沙我くんがすごい早い段階で考えてた曲で、それを三つに分けたって言ってましたけど、岡野さんが言ってたのは、みんなが思うようなAlice Nineっていう、ちょっとポップな部分と、その一歩先――僕らのもっと深い、コアな部分を〈陰と陽〉みたいな、または〈地球と月〉みたいなコンセプトを持って見せるっていう……そのコンセプトを突き詰めていくうちに、〈GEMINI〉っていう楽曲が出てきて、沙我くんはもちろん、メンバー全員がレコーディングのギリギリまで苦しんで、より良い曲にしようと試行錯誤していくなかで、この曲をいま、みんなにいちばんに聴いてもらうべきなんじゃないか、っていう話になりました」

――〈地球と月〉で言うなら、〈GEMINI〉は月ということですね?

「そうですね。見慣れた風景から、別世界へみんなを連れていく――それもやっぱりシアトリカルというか、日常から非現実にトリップできるのが、こういうバンドの武器だと思っていて。小田急線沿いの歌を歌ったりとかも素晴らしいと思うんですけど、僕らはそういうことを格好良くできない。『GEMINI』は僕らができる、皆さんに対するエンターテイメントの仕方だったんじゃないかなと思います」

 

カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2011年06月08日 18:01

更新: 2011年06月09日 18:40

インタヴュー・文/土田真弓

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