INTERVIEW(2)――シングルでは表面を
シングルでは表面を
――そして今回のシングル“BLUE FLAME”ですが。本作は『GEMINI』を踏まえて、というよりは、従来のAlice Nineらしいもの、という趣きの楽曲ですね。
沙我「僕のなかでは、アルバムとシングルって闘うフィールドがまったく違うんですよね。それがいっしょだと、〈GEMINI〉みたいな曲がシングルになってしまいかねないと思うんですよ。でも、たぶん自分が中学生、高校生の時にあの12分の曲を聴いてもバンドをやろうとは思わなかったんで……シングルは、ホントにありふれた言い方ですけど名刺代わりというか、おいしいとこだけを凝縮して、このバンドの表面を知ってもらう。で、アルバムはその表面からもっと深いところへ潜っていくというか、そういう部分を表現する場だと思ってるんで、完全に住み分けをしてますね」
――では、今回のシングルは『GEMINI』以降のAlice Nineを表現する曲として選んだわけではない?
沙我「そうですね……たぶん、Alice Nineの〈いま〉を表現するっていうことをいちばん意識したのは2009年の夏に出した“華”の時期だと思うんです。アルバム『VANDALIZE』の流れを大事にしつつ、その先を見せようとしていたんですけど、今回はそういうことを意識したというよりは、もうリセットしたっていう感覚があって。単純に、楽曲としていいかどうかをまず考えましたね。納得できるものを作ろうという感じで取り組みました」
――この曲は、沙我さんが原曲を持ってきたところから始まったんですか?
沙我「そうですね。そこにメンバーだけでなく、プロデューサーの西平彰さんとか、レコード会社の方とか、周りのいろいろな方の意見を採り入れていって」
わかったうえでの遊び心
――テクニカルな部分も盛り込みつつ、すごくキャッチーに聴こえる作りになってますよね。
Nao「そうですね。恐らく」
――ご自分たちでは、なかなかそのあたりは客観的に捉えられない?
Nao「どうなんですかね? ただ、バンドがどうしたらいいかわからないとき、変な方向にいきそうなときにストッパー役になってくれるというか(笑)、道筋を修正してくれるっていう意味で、プロデューサーはすごく大事な立ち位置だと思いますね。『GEMINI』は岡野さんがいたからあれだけのクォリティーの作品が出来たっていうのがありますし。俺の感覚だと、バンドは素材で岡野さんが料理人みたいな。理論的なこともそうですけど、理論だけじゃ、マニュアルだけじゃダメってところをすごく学びましたね。わかったうえでの遊び心が必要なんだって。それがだから、プロデューサーがいなくてもできれば最高なんですけどね(笑)」
――では、アルバムで得た多くのことが、今回のシングルにも活かされていると。
Nao「活かされてますね。ドラムはケチョンケチョンに言われてたんで(笑)。俺はけなされて伸びるタイプなんで、楽しかったですね」
――それなら良かった(笑)。
Nao「自分の足りなさはわかってるから嫌じゃないんですけど、まあ、それ以上に言っていただいて。リズム・パターンの考え方とかアレンジの仕方とか。音のないとこに入れろ、合わせてるだけじゃだめだ、って……学びましたね。そういうところが活きて、『GEMINI』は聴く人によって変わるかもしれないですけど、ドラムもおいしく出来上がってますね。〈GEMINI〉のAメロでやったリニア・ドラムとかは……」
沙我「なにそれ?」
Nao「(沙我に向かって)俺、いまハマってるんだけど、(音を)かぶせないで順番に打ってくやつ。“BLUE FLAME”の2Aとかもそうだね。〈トツタツ・ツツタン〉とかってかぶらないで、手足を交互にバラバラに打つからけっこう難しい。(筆者に向かって)綺麗に打たないとノリが出ないんですけど、“BLUE FLAME”はキックを4分にしたんで、曲のなかで上手く馴染ませることができましたね」
――将さんは、今回の“BLUE FLAME”に関していかがですか?
将「自分が思うに、『GEMINI』とか前作の『VANDALIZE』でもその感覚はあったんですけど、その時点でやれることをやり切れたからこそ、単純にいまは〈いい曲を世の中に送り出したい〉っていう欲求のほうが強くなってるんだと思いますね。フラットな気持ちというか。だからバンド・メンバー以外の、第三者の意見も進んで聞こうと思えるし、そういうすごく前向きな姿勢でいられるのは、『GEMINI』をリリースしたことによる収穫なのかな、って。岡野さんには、僕は歌詞に関してかなり絞られたし……あとは、作曲者の沙我くんの、歌詞に対する要望。より音楽的に、音が響くような言葉を選んでほしいっていうことも反映させて、スキル的なところで“BLUE FLAME”は楽しんで出来たかな。例えば〈まだ、あ~いしてる〉ってところ(サビ)は全部〈あ段〉から始めて、声が明るく飛んでくる音を選んだりしていて」
――そのうえで描いているストーリーは、楽曲からイメージを受けて書かれてるんですか?
将「ヴォーカルって、バンドの扉みたいな立ち位置だと思っているんで、だからみんなが曲に対してのイメージをよりしやすくする手助けになればいいな、っていう。そういう歌詞の書き方なんで、ホントに曲に対して……アルペジオだったり、リズムだったり、メロディーに対してのインスピレーションが歌詞になってますね、“BLUE FLAME”は。ちょっと哀愁があって寂しいんだけど、でも実は熱く燃えている心もある、っていうのが僕の印象だったんで、うん。そういう未練だったり、後悔の気持ちを捨てきれないで、まだ熱く燻ってるんだけど、それでもやっぱり明日に手を伸ばしたいっていう、そういう歌詞になってます」
――それでタイトルも〈青い炎〉なんですね。
将「そうです、そうです。見た目は冷たいというか、クールな色なんですけど、すごく温度が高いっていうタイトルです」
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