エイミーの歌声からまず想起されるのは、ジャズ好きだった父親に教えられたというサラ・ヴォーンやダイナ・ワシントンなど、オールド・タイミーなジャズ〜ポピュラー歌手たちだろう。また、大仰な発声と節回しは「007 ゴールドフィンガー」のテーマで知られるシャーリー・バッシーにも似ている(関係者も同じ連想をしたのかエイミーは次の〈007〉で主題歌を担当するとか!)。そこに、彼女がお気に入りだというシャングリラズなどのガールズ・グループ、オールディーズ〜ドゥワップ、ライヴで“Cupid”を取り上げているサム・クックのようなソウルといった懐かしい味わいが折衷されて、エイミーのセンスを形作っているのは疑いない。そんな彼女の嗜好が反映されたからこそ、『Back To Black』にはテンプテーションズ“My Girl”そっくりの進行や、マーヴィン・ゲイ&タミー・テレル“Ain't No Mountain High Enough”やオーティス・レディング&カーラ・トーマス“Tramp”のネタ使いといった仕掛けが用意されたのだろう。さらに、ティーン時代の彼氏の影響もあってレゲエやスカに熱中したという彼女は、メイタルズ“Monkey Man”とスペシャルズ“Hey, Little Rich Girl”をシングルでカヴァーしている
▼関連盤を紹介。
左から、サラ・ヴォーンのベスト盤『Sings The Standards』(EMI)、シャーリー・バッシーのベスト盤『The Magic Of Shirley Bassey』(Harris)、サム・クックのベスト盤『The Best Of Sam Cooke』(RCA)、テンプテーションズの65年作『The Temptations Sing Smokey』、マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルの編集盤『The Complete Duets』(共にMotown)、オーティス・レディング&カーラ・トーマスの67年作『King & Queen』(Atco)、メイタルズの編集盤『Monkey Man』(Trojan)、スペシャルズの80年作『More Specials』(2Tone)
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