インタビュー

LONG REVIEW――井手綾香 『Portfolio』

 

井手綾香_J170

17歳のシンガー・ソングライター、井手綾香は100頭以上の野生馬が放牧される宮崎県の都井岬という自然豊かな場所で生まれ育った。そんな彼女の音楽を聴いているとき、目の前には風光明媚な景色が広がり、抜群な眺望にいつも心が洗われる。何よりも年齢以上の貫禄を感じさせるヴォーカルが良くって、シンプルなメロディーを大きなスケール感で見せる歌のパワーに惚れ惚れさせられっぱなしだ。キャロル・キングへのシンパシーを込めた曲があちこちに見られるファースト・ミニ・アルバム『Portrait』は、とにかくいろんな意味で彼女の育ちの良さを教えてくれた作品だった。

あれから間を置かず、2枚目のミニ・アルバム『Portfolio』が届けられた。〈作品集〉という意味合いを持つ本作は前作と同じく、曲ごとに腕利きのピアニストを迎えて制作した〈歌とピアノ〉による飾り気のないアルバムだが、この素っぴんな音作りが彼女のポテンシャルの高さを最大限に活かすのに最適だということは間違いない。Dr.kyOnの躍動感たっぷりな鍵盤捌きがみられる“君からのメッセージ”、国府弘子の安らぎに溢れた演奏をバックにした“青い空”など、歌声の鮮烈な眩さに目を細めずにはいられなくなることもしばしば。やはり作りがシンプルなぶんだけ、成長のスピードの速さがわかりやすくなっているものも多い。例えば、自身のピアノで奏でたゴスペル調バラード“こんな歌があったなら”。雲を突き抜けるような圧倒的な声量はリスナーを一瞬で虜にするであろう迫力に満ちており、青い海に放流されるべきはこんな歌であるべき、なんて呟きたくなった。なおTVCMに起用されて好評を得た“雲の向こう”の〈strings ver.〉がボーナス・トラックで追加。楽曲の世界観をさらに大きく広がた仕上がりで、これは嬉しい。

 

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掲載: 2011年08月03日 18:01

更新: 2011年08月03日 18:26

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