INTERVIEW(3)――フォークの伝統を受け継ぐというよりは……
フォークの伝統を受け継ぐというよりは……
――一部では金田くんのワンマン・バンドというイメージもあるかもしれないけど、実はまったくそうではないと。
金田「それはもちろん。この5人を通せば絶対におもしろいものになるって手応えがあるんですよ。特に、去年ドラムが(服部)ケンジになってからはその手応えが大きいですね。最初ケンジといっしょにみんなでスタジオに入った時は、ケンジすごい緊張してて、どうなるんだ!って感じでしたけど(笑)」
ツネ「あんまり緊張してたから、スタジオ後に〈まあ、呑みにでも行くか〉みたいに誘ったりもして(笑)」
服部ケンジ(ドラムス)「転校生の気分でしたね(笑)。もうあの日のことは何にも覚えてないです。頭真っ白で」
金田「俺も、〈すっげえいいドラマーだからさ!〉ってみんなに最初に伝えてハードルを上げてたからなあ(笑)。でも、ケンジが入ってから曲がスッと演奏に馴染みましたね。あと雰囲気が良くなったし、アレンジがしやすくなりましたね」
服部「自分は難しいことができないドラマーなので、バンドのアンサンブルがシンプルになったとは思いますけどね(笑)」
金田「結果として、曲をちゃんと聴かせるって方向にわかりやすく向かうようになったと思いますね」
――THEラブ人間は、〈新しい〉〈21世紀型の〉と謳う一方で、例えば友部正人あたりにも通じるようなある種の懐かしさ、既聴感を孕んだ音楽でもあると思うんだけど、アップデートしつつ伝統を受け継いでいこうという自覚はどの程度あるのですか?
金田「それはありますよね、やっぱり。でもそこを意識して常に曲を作っているわけではないんです。曲を作ったり歌詞を書いたりする段階で頭を空っぽにしなきゃいけない。そのぶん普段の生活で蓄えてきたもの、聴いてきて身につけてきたものが自然と出ちゃうと思うんです。フォークの伝統を受け継いで新しいことをやって……みたいなことを前提に曲を書いているわけじゃないんですよね。ただ、ヴァイオリンが入った段階で、やっぱりはちみつぱいは死ぬほど聴きましたね。死ぬほど聴いたけど……あまり参考にしたりはしなかったかな。それよりは各々がやりたいこと、みんなから出てくるものを優先して参考にしていったほうが楽しかったです」
谷崎「僕はメロコアとかが好きで。ヴァイオリンは小さい頃から習っていたから弾けたんですど、はちみつぱいもムーンライダーズもあまりちゃんと聴いたことがありませんでした。ヴァイオリンの持っている高貴なイメージに馴染めなくて、それで前のバンドの時は暴れてやろう!くらいに感じていたくらいなんで。だからいまもヴァイオリンという楽器のイメージに従うような意識はあまりないんですよね。もちろんヴァイオリンの音色って哀愁がありますから、そのあたりはどうしても曲調とかを考えてアレンジしたりしますけど」
金田「うん、曲をみんなで仕上げている時、タニには〈ムードを出してくれ〉って言うんですよ。曲のムードを出すのにタニに頼むことが多いんです。キーボードとヴァイオリンには特にそのあたりを期待したいんですよね」
――でも、ヴァイオリンも鍵盤もどちらもウワモノの楽器でしょう? ムードを出すためのアレンジにしても曲のなかで役割を分けるのが難しくないですか?
ツネ「だから、(谷崎と)2人だけでよくスタジオに入りますよ。バランスをとるのが難しいですからね。あと、僕はライヴでは前に出ることが多いんですけど、そのあたり金田とのバランスも考えていますね。金田も僕に、ライヴでは引っ張っていってほしいと思っていると思うんで。いっしょに歌ってみてバランスを取ったりして」