INTERVIEW(4)――〈青春〉の価値観を問い直す
〈青春〉の価値観を問い直す
――メンバー全員曲を歌える?
全員「歌えますね」
――それはすごいなあ。バンドのドラマーのなかには自分のバンドの歌を歌えないし、どんな歌詞なのかも知らないって人、ときどきいるけど。
金田「それはイヤですよね。でも、ウチのバンドにはないです。一度、ライヴの映像を後から見た時に驚きましたね。みんな口を開けて歌っていて。もちろん、僕もそこを大事にしてるんです。最初、曲が出来たら歌詞をメンバー全員分コピーして渡すんですよ。ちゃんと歌詞の意味とか内容を理解してもらってからアレンジしたり演奏してほしいんで。例えば今回のアルバムに入っている“若者たちの夕暮れ”のなかに〈黒い鉄球〉って歌詞があるんですけど、あれはえみが黒い鉄球をイメージしてベースの音を出してくれてるんです」
おかもとえみ(ベース)「曲ごとのエピソードを聞いてそのイメージを交えつつ(笑)」
――でも、女性なら金田くんの歌詞に共感できないところもあるでしょう?
おかもと「そうですね(笑)。結構キツい曲もあります。ただ、歌詞の世界観にできるだけ近付こうとはしていますね。共感できないけど、男目線だとそうなるんだな、と理解していくようにして」
金田「(苦笑)でも、僕としてはできる限り歌詞を飾り立てたくないんです。一切フィクションはなしで100%自分のこと、自分が思っていることを書く、という点は絶対に譲れない」
――言わば、個人の過去の日記をそのまま仲間の手を借りて歌にする、作品にする作業っていうことだものね。
金田「ホントそうです。しかも、日記じゃ言えないことも、歌にするとなると、もっと言えるというのもある。おまけに、一度曲が出来てしまうと、もう自分の手を離れてみんなのものになっていくというおもしろさもある。そこにお客さんが500人いたら500人の手に渡る。それだけでもう幸せです。THEラブ人間のおもしろさはそこですね」
――では、自分自身の恋愛体験をそのまま晒すことによって、どういう哲学を伝えたいと考えていますか?
金田「それは結構ハッキリしていて。特に今回のアルバムがそうなんですけど、青春は美しくてキレイなだけじゃないっていう。今回のアルバムに付けたコピーが〈駆け抜けろ! 血まみれの青写真〉というものなんですけど、青春なんて本当は恥ずかしくて思い出したくないようなことだったり、蓋をしてしまいたかったりするものじゃないですか。少なくともそういうふうに思われていますよね。でもそれじゃダメなんですよ。それは忘れたフリをしてるだけだからって。振り返ったら美しいものだって、みんなそういう気がしてるだけで、実際はそんなもんじゃない。それがいちばん言いたいことなんです。青春は美しく清らかで……なんてアホかと(笑)。もちろん、そういう部分もあるだろうけど、それと同じくらい暗くて辛くてドロドロしたところもあったはずなんです。そこを見逃してはいかんだろ、と。というより、そもそもそういうドロドロした黒歴史的な、ダークサイドと言われているような部分は本当にダークサイドなのか?と。言われているだけじゃないのか? って、今回は特にそこにフォーカスしています。最初からキチンと全曲をそういうキーワードと主張で曲を作りましたね」
――つまり、価値観の問い直しをしたかったと?
金田「そうですそうです。むしろこっちの感覚がノーマルだと思っていますからね。全然狂ってないし。みんなの記憶を蘇生させたいんですよ。音楽は明日のためにあるわけだから、こういうことを歌うことでみんなに問い直したいというのはありますね」
――それは、暗いとされている音楽は本当に暗いのか? 明るいとされている音楽は本当に明るいのか?という価値観をも問い直すということでもあるよね?
金田「その通りです。今回のアルバムのタイトル曲、これなんか最初はもっと暗いと言えば暗いイメージだったんですよ。でもある日、中古レコード屋の100円コーナーでジャケ買いしたキューバ音楽のレコードを聴いて意識が変わったんです。キューバ音楽って歌詞は結構重かったりするんですよね。近親相姦とかレイプとかをテーマにしたりして。でも、それをわざと明るい曲調で踊らせるような音楽にして聴かせている。それを聴いた時に、この“これはもう青春じゃないか”の歌詞をブライトなメロディーで聴かせるのっておもしろいなって思ったんですよね。ちょうど、その頃スタジオでえみとケンジがスタジオですごくファンクっぽいリズムを出したから上手く合ったんです」
おかもと「最初、(ケンジと)〈コットン・キャンディー〉と〈山登り〉ってイメージでリズムを作ってみようよってやってたんですけど、そこに金田くんが書いた歌詞を合わせようって言ってきたんですよね」
金田「だから、そういうところなんですよ。そこがこの5人でやっている意味というか、バンドだからできることというか。それがあるからこそいまの自分たちがあると思うんですよね。俺ひとりでできること以上のことがこの5人でやっていると返ってくる。で、そうやって出来た曲をライヴではお客さんがいっしょになって歌ってくれる。すごい奇妙だけど、ホントにそれこそがいちばん嬉しいことなんですよね」