BRAHMAN “霹靂”
[ interview ]
3月11日以降、TOSHI-LOWがどんな行動を起こしてきたのかは、心ある音楽ファンはすでによく知っているはずだ。BRAHMANとOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDをフル稼働させ、かつてないほど精力的にライヴを行い、被災地を何度も訪ね、片時も休まずに走り続けるその姿は、多くの人々に勇気を与えてきた。BRAHMANにとって2年3か月ぶりのリリースとなるニュー・シングル“霹靂”にも、いまのTOSHI-LOWとBRAHMANの放つ圧倒的なパワーが、余すところなく記憶されている。一発録りのダイナミックな演奏、激しい歌唱、そして強く胸を打つ歌詞――2011年秋、いまを生きるすべての人たちへこの音楽を届けたい。
揉まれることで、主義主張がはっきりする
――この夏は、ライヴを相当やってますよね。例年以上に。
「嬉しいですね。声をかけてもらえるのは」
――BRAHMANも、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDも、どっちも自然にやってる感じですけど。分けてないというか。
「分けてないですね。というか、分けなくなった。これだけの幅でやれる人はあんまりいないだろうし、どっちも楽しいですよ」
――いまはライヴをやりたい、見せたいという気持ちが強いですか。
「そうですね。たとえばフェスにしても、ただプロモーションで出ることは、自分のなかで負い目があるんですよ。そこで自分の主義主張を垂れ流してもしょうがねえなと思ってたし、フェスで楽しむことが音楽だぜ、みたいなのも嫌だなと思ってたし。でもいまは、歌いたいことがあるというか、音楽を通じて自分たちが生きていることを感じることが多いので、それを素直に出したいなというのがあって。そこに躊躇はないですね」
――なぜこんなことを訊くかというと、TOSHI-LOWさん、〈フェスに出るのはあまり好きじゃない〉って以前に言ってたじゃないですか。なのに今年はたくさん出てるから、これは絶対に何か意図があるからだと思ったんですよ。
「フェスが好きじゃないと言ったのは、そういう世代じゃないから。音楽を聴くということに関して、ただ明るくて開放的で、それがロックだよ、それがバンドだよ、みたいなことを言われることがあんまり好きじゃないというか。それはひとつの方法論だし、入口ではあるけど、そうやってあなたが、焼きそばを食べながらぷらぷら歩いて、通りすがりで観てるバンドの断片だけで〈あのバンドは良かった、あのバンドはクソだった〉って、そんなふうにショウケースみたいに観てる人たちに違和感を感じるというか。それがメインストリームの見方になっていくということが好きじゃないというか」
――でもそんなことを超える衝動が、今年はあると。
「別に、計算してるわけじゃないですけどね。誤解も含めて、やらない必要性はないというか、やっていくなかで揉まれていくことによって、自分たちの主義主張もはっきりしてくるというか。得手不得手とか好き嫌いを超えて、自分たちの持ってるツールでどれだけできるか、そこで自分たちの生き様をどれだけ見せるか。そのためには、場所を選ぶ必要性はいまはあんまりないのかなと思いますね」
――しかも、最近ステージ上で、けっこうしゃべってるみたいですね。
「しゃべってますね。まあ別に、黙ってたって誤解を生むんだから、しゃべって誤解を生むことも全然問題ないというか(笑)。その場のノリでしゃべってますからね」
――去年までほとんどノーMCだったTOSHI-LOWさんがすごいしゃべってるって、あちこちで聞くんですよ。
「MCでどうこうしようとか、そういう発想がもともとないからしゃべらなかったわけですよ。しゃべることが主体じゃないから。要は、しゃべらなくてもどれだけ伝わるかということでやっていたので、あくまでもそれはおまけなんですけど。伝言ゲームになると言いたいことが伝わらないのはわかっているので、それよりは、ライヴという場で観たものをそのまま持って帰れば、それがいちばん正しいじゃないですか。だからMCをしなかったんですけど、どのみちそこで取り上げられることは俺たちの本質ではないし、そこをおもしろがる人たちは俺たちの本流とは関係ないから、どうでもよかったんですけど。ただ俺たちの本流をわかっている人たちには(MCをすることで)よりわかりやすいんじゃないかと思うし、そこに誤解や軋轢は生じないと思うので」