インタビュー

LONG REVIEW――BRAHMAN “霹靂”

 

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彼らの存在自体を、そして〈3.11〉後にTOSHI-LOWが示した行動や語った言葉を少しでも知る人ならば、このシングルが単なる〈久しぶりの新曲〉ではなく、特別な意味と重みを持った作品であることはすでに伝わっているはずだ。震災後、誰よりも先に立って復興へと身体を投げ出してきた彼ら。その事実は新たな作品とも間違いなくリンクしている。しかし、だからこそ、ここの文章ではあえて音楽に対象を絞って書こうと思う。

久々となる音源は、曲名だけでなく歌詞もすべて日本語。バンド史上、特に〈伝える〉ということに意識的になった楽曲が収録されている。シャッフルから2ビートのパンクへと一気に加速するAメロから、3分に満たない短さのなかで目まぐるしい展開と叫びの応酬が突き刺さる“賽の河原”。〈抱えた両手の中の慰めの嘘ばかり〉という哀愁を感じさせる歌い出しから重量感あるリフが突進し、〈もう一度 旅に出よう 二度とはもう戻らない〉という決意の言葉と共に爆音のサビへと飛び込んでいく“最終章”。ゆったりとしたベースのフレーズから始まり、静かなアンサンブルから〈当たり前に 夜は明けて〉という最後の2行へと上り詰めていく、これまでのキャリアのなかでもっとも歌に焦点を当てたスロウ・ナンバー“霹靂”。

どの曲も、非常に強靭な音が鳴らされている。次々と風景が入れ替わる緩急の激しさに、鍛え上げたエネルギーをすべて注ぎ込むような歌と演奏。3曲それぞれのやり方で、BRAHMANというバンドが突き詰めてきた美学が昇華されている。全身全霊で鳴らされる音楽とは、ここに収められた楽曲のようなもののことを言うのだ。

 

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掲載: 2011年09月07日 18:01

文/柴 那典