インタビュー

INTERVIEW(3)――自分のテンションが上がるやり方が重要

 

自分のテンションが上がるやり方が重要

 

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——そういった鍋の音とかって、デモテープじゃなくて完成した音源にも入っているんですか?

Shige「アルバム全編に入ってます」

Kate「“Go Around”には豆乳の音が入ってるよね。Shigeが豆乳のパックを振ってるんです。それもカット&ペーストじゃないですよ。曲の頭から最後まで振ってるんです。〈俺は負けたくない〉って言いながら(笑)」

Shige「そう。何か試されてる気がして(笑)。豆乳の重さに負けないようにがんばりました」

——水じゃなくて豆乳っていうのは何かこだわりがあったんですか?

Kate「水のペットボトルが重すぎたんでしょ(笑)」

Shige「それはあるな。でも、基本的に何となくですよ。何の音が良いのかなんて考えてもわからないし。その場その場で自分がおもしろいと思うこと、テンションが上がることをやるっていうのがいちばん重要なことだと思うんですよね」

——鍋の音はどこで使ってるんですか?

Shige「曲によっては全部使ってるものもあります。キッチンにあった鍋とかお皿とか、バーッと出してきて、とりあえずマイク1本立てて、キンコンコンコンって」

Kate「“Forget”とか、そういう音すごく入ってるよね」

Shige「そう、“Go Around”でも(目の前にある机の天板を指差して)こういうガラスを叩いて、それをキック替わりに使ったりして」

——Shigeさんにとって、そういった日用品も楽器みたいなものなんですね。

Shige「そうです、と言っておきたいけど、実は俺、ミディとか打ち込みを使えないんですよ。だからビートも実際に録音するしかない。でもマンションの一室でレコーディングしているから、ドラム・セットなんて近所迷惑で使えないでしょう? で、どうしようかと思った時に、(目の前の机を叩いて)これでいいんじゃないかって」

——宅録するミュージシャンには機材にこだわる人も多いですが、Shigeさんはどうなんですか?

Shige「まったく興味ないです。コンピュータはノートパソコンしか持ってないし、それも途中でクラッシュするようなめっちゃボロいやつで、このアルバムを作ってる時も全然動かなくて困ったんです。だから、もともと適当なんですよ。マイキングとかもめちゃ適当だし、アルバムには外の車の音とか冷蔵庫のノイズが入りまくってる」

——それはあえて入れたというわけじゃなくて?

Shige「最初から気にしてないんですよ。あと、俺思うんですけど、普通に音楽を聴いてる人って、ノイズがどうとか、高級なスタジオで録ってる音だとか、そんなことを気にして聴いてたりしないんですよ。そんなことより、作り手が楽しくやってる雰囲気が入ってれば、聴いてる人も楽しめるんじゃないかなと思ってて。だから、レコーディング環境や機材がどうこうよりも、まず自分のテンションとかモチベーションが上がるやり方、そういうのが重要じゃないかなって。そう考えると、無理に高いスタジオを借りてドラムを叩くよりも、机を叩いちゃったほうがおもしろいし、そういう気分が曲に入るのが重要だと思うんですよね」

——そういう曲作りのアプローチは以前から?

Shige「その時々でやってたんですけど、今回はもうほんと、そればっかりでした、部屋にあるものを使ってやろうと」

 

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掲載: 2011年09月07日 18:00

インタヴュー・文/村尾泰郎