INTERVIEW with Heavenstamp(3)――ビートルズの……
ビートルズの……
――そして“Hellfly”ですが、この曲は……Heavenstampっぽくないのかな? タンバリン必須なグルーヴ感で、エスニック・テイストな……でも、マンチェっぽさもあるように思いますけど。
Tomoya.S「ああ~、それは嬉しいですね。もしかしたらメロディーのドバーンとしたところですかね? 個人的には、ディスコ・パンクでもなければシンフォニックなシューゲイズでもないものをやってみようと思って作った曲で。自分のなかでいちばんコレっぽいなって思うのは、ビートルズの“Tomorrow Never Knows”なんですけど、あれ的なものにもっとヴァース・コーラスがつくような形で、ワンコードの曲を完成させてみたいな、っていうテーマがあってこういう感じになったんですけど、メロディーは確かにマンチェスター的な雰囲気があるような気がしますね」
――最初から“Tomorrow Never Knows”を意識して作った?
Tomoya.S「というよりは、結果、似てるなーって。ワンコードだし、ドラムのリズム・パターンもそういうループを使ったりすると、どうしても“Tomorrow Never Knows”っぽくなるとは思うんですけど、〈やっぱ、なったな〉みたいな(笑)。で、最終的にはコラージュな感じでギターを2小節ごとかな? 16人分ぐらいギターが出てくるんですけど、それももう、引っ張られてビートルズがやってたように他の曲のワンフレーズを持ってくるとか、そういうことをやってみようかな、って」
――あの曲のあそこから、とか選んで?
Tomoya.S「そうですね。“Stand by you”のスラップを、Dの曲のキーに持ってきて弾いたりとかしてます。適当に選んで、どうやったら繋がってくかな、って雰囲気でやっていったんですけど。1個1個、全部ギターとアンプも変えながら、贅沢にレコーディングして。すごく楽しかったですね(笑)」
――あそこ、一人でやってるんですね。
Tomoya.S「一人です。でもSallyが弾いてるフレーズは、Sallyに弾いてもらいました。そのギターのセッティングにして」
――掛け合い的な感じになってますよね。
Tomoya.S「別のギタリストが横に並んで、一人ずつ代わっていくみたいな感じで」
――もしラッセルさんがいたら、3人でやれそうな。
Tomoya.S「そうですね……でも変則チューニングとかがあるから、再現するのは相当難しいと思うんですけど。掛け合い的な要素があるってことで、ライヴのときにはもっとザックリと前半パートと後半パートに分けて、それぞれアドリブでソロを弾くみたいな。結果、最初アドリブで作ったものをそのまま弾いてるからアドリブじゃないんだけど(笑)。そういう感じです」
――全体的にこの危ういサイケ感はいいですよね。
Sally「私も曲を聴いたときの印象が、サイケデリックな、気怠い感じだったので、そういうふうに歌いたいな、って。この曲はギターを弾いてなくてタンバリンなんですけど、もう、そういう方向性に徹しようと」
オリーブ色の髪の子が小悪魔だったら
――歌詞はいかがですか?
Sally「これは妄想を完全に膨らませて遊びましたね。どんな歌詞がきてもおもしろくなりそうな曲だと思ったので、もう、すごく自由に書かせていただきました(笑)。本当に、街を歩いてたらオリーブ色の髪をした可愛い女の子がいたので、可愛いな、その子が小悪魔だったらどうだろう?って、そういう妄想を膨らませていって、そのまま歌いました」
――では、オリーブ色の髪の子がいなかったらこういう歌詞には……。
Sally「そのときは、別の何かを見つけて妄想を膨らませたでしょうね(笑)」
――Sallyさん特有のファンタジーが爆発しているような。
Sally「はい、もう爆発させましたね(笑)。書いてて楽しかったです」
――タイトルの“Hellfly”は造語ですか?
Sally「そうですね。曲が出来た時点で〈それまでのHeavenstampにはなかったもの〉ってことだったので、Heaven/Hell、Stamp/Flyを逆にしてるんです。もとは仮タイトルだったんですけど、曲がそういう感じを表してるっていうのもあったし、歌詞もそんなに離れている雰囲気ではなかったので、これはしっくりくるなと思って、これがいいって」
ロンドンでのライヴがいい経験値に
――そして、毎回恒例のリミックスは、今回は3曲ともトマトが手掛けていて。PV、アーティスト写真、ジャケット写真もそうですね。
Tomoya.S「はい」
――今回彼らとコラボレーションすることになった経緯は?
Tomoya.S「そもそも、結構早い段階で、まずジャケットとPVは、カラフルなものではなくて洗練されている――無機質とまではいかないにしても、削ぎ落とした、芸術的な作品にしたいっていうイメージをスタッフさんには話していて、そのなかで〈トマトはどうだろう?〉っていう提案をいただいて。リミックスもトマトでできるってことだったので、じゃあ完全にHeavenstampとトマトでコラボレーションの一枚にしようって。最初からそのコンセプトがあったっていうよりも、段階を踏んでそうなった、っていう」
――PV撮影のためにロンドンに渡ったとき、現地でライヴもやったらしいですが。
Sally「はい。現地のパブで」
――向こうって、機材が揃ってなかったりとかいうタフな状況も多いみたいですね。
Tomoya.S「なんもなかったです(苦笑)」
Sally「ドラムセットもなかったよね?」
Mika「なかったね(笑)」
Shikichin「ベース・アンプもなかったね……」
Tomoya.S「前に演奏した人はアコギの弾き語りとかで、このまま俺たちの番になってできんのか、って(笑)。リハーサルもないし……でもなんとかドラムセットがきて」
Sally「私たちの次に出るバンドさんがギリギリに来たので、ギター・アンプを借りて、ベース・アンプはないからラインで直で出して(笑)」
Tomoya.S「でもなんとかなるから、って向こうも言ってて。大丈夫だよ、って言われれば、もうそれで、って言うしかない(笑)」
――それで、なんとかなりました?
Tomoya.S「すごくいいライヴだったと思います(笑)」
Sally「お客さんの反応もすごく良くて。各々が楽しんで、心からノッてくれてる感じだったので、やってるこちらも楽しかったです」
――今後のバンドに対して、影響はありました?
Tomoya.S「もともと、ラッセルが僕らのことをすごく気に入ってくれてるっていうことも含めて、国境を越えて伝わるものは絶対あるって思ってたんですけど、実際ライヴが終わったあとのお客さんの反応とか、言われたこととかを思うと、国なんか関係なく聴いてもらいたい、って堂々とやっていいんだな、と。そういう確信と自信を得たところはありますね」
――グラストン・ベリーにも出られるように。
Tomoya.S「そうですね(笑)。ロンドンでのライヴは、バンドにとっては本当にいい経験値になったなと思います」