INTERVIEW with Heavenstamp(2)――スピード感と爆発
スピード感と爆発
――続いて2曲目の“I don’t wanna die”ですが。
Tomoya.S「これも一発録りですね。もともとあった曲なんですけど、“Waterfall”が出来たあとに、こういう形でシューゲイズをミックスできるんだと思って、ギターのアレンジを変えたんですよね。最初はもうちょっと、パンキッシュな部分だけって感じだったんですけど、結果的にはパンク~ニューレイヴ的な感じになったかな」
――メンバーの皆さんにはどんな説明を?
Tomoya.S「うーん……(延々と考える)……速い曲だからがんばってね、みたいな感じだったんじゃないですかね(笑)」
Sally「なんか、速い曲がなかったから」
Tomoya.S「そこに速い曲を入れようと。それまでは全部テンポ120の4つ打ちの曲だけが出来ていく感じだったので、それもちょっとなあと思って、ディスコ・パンクのなかのパンクの部分と、ニューレイヴ以降のバンドっぽい要素、音にもあると思うんですけど、それをミックスして結構忠実なデモテープを作って、みんなに聴いてもらって、それをもとにやってもらったっていう。珍しいんです。あんまり俺、デモテープを作るってことがないので」
Shikichin「確か、僕の記憶が正しければ、リーダーが車のなかで聴かせてくれて。〈カッコイイ! これはやりたい!〉って強く思いましたね」
――Mikaさんはこの曲を聴いてどうでした?
Mika「演奏面では、それまでそれほど速い曲をやってなかったので苦労したっていうのと、あとは気合いを注入しよう、みたいなことを言われてたような。そのときたぶん、〈私たちは逆に生きることが反発なんだ〉みたいなイメージでやろうって」
――それで“I don’t wannna die”?
Sally「……どうだったかな(笑)? 正直その話は覚えてないんですけど、でも、死にたくない気持ちは人一倍あったので……たぶん、このときがピークだった(笑)。それで曲もアッパーな感じだったので、乗せてしまえ!みたいな。そういう気持ちだったんだと思います(笑)」
Tomoya.S「この曲はスピード感と爆発がすべてだと思うので、衝動的なものを持ってほしくて、もしかしたら俺がそういうことを言ったのかもしれない」
Mika「あと、実際テンポが上がったんですよね。もうちょっと遅いテンポでやってた曲で、余裕が出てきちゃって良くない、ってことでさらに上げたんだよ」
Tomoya.S「そうだ。もっとキリキリしないと、って(笑)」
――そういうドライヴ感はありますね。歌詞も、ヴォーカルもはすっぱな感じで。
Sally「初期衝動的なものをそのまま詰め込もうって歌のレコーディングに臨んだので、そういう感じになったのかなって思うんですけど(笑)」
――この曲の、言葉的な中心にあるのはやっぱり〈I don’t wannna die〉で。そこから広がっていっているように思いますが、これも過去とか未来とかどうでもいい、って感じですよね。
Tomoya.S「本質的には、1曲目も2曲目も同じことを言ってると思うんですよね。曲によって言葉が違うけど」
――ともかく前を向いて生きる、っていう。そういうところがSallyさんが歌詞を書く際のテーマだったりします?
Sally「書きたいテーマとして据えているわけではないんですけど、“Waterfall”と同じように、深層心理にあるんだと思います。ずっと。だから、ここでも曲によって引っ張られてきたんだと思います。そのときに。たぶん、深いところで流れてるものだと思うんですね、私のなかで」
F#からDにいくために
――では、次はインスト“Lost control”ですけれども。
Tomoya.S「これは4曲目の“Hellfly”までレコーディングが終わったあとに、2曲目と4曲目を繋ぐ曲として作ったんです。“Hellfly”はキーがワンコードのDの曲なんですけど、そこにすごくいきたくなるような、そこに到着するしかないみたいな曲を作るつもりで、しかも“I don’t wannna die”の最後のコード進行から変形させてそこに辿り着くみたいな、そういう曲です。音楽的に言うならば、F#で終わったものがF#からDにいくための流れであって、そこで引っ張りまくった挙句、1曲通してワンコードだったりするので、Dに辿り着くために必要な時間であったり、もっとも適したインタールードの役割を果たさせようとしたっていう感じですかね」
――要約すると、めっちゃDにいきたい曲、っていう(全員爆笑)?
Tomoya.S「そうですね(笑)。めっちゃDにいきたいんですけど、でもDっていうキーは出てこなくて、でもずっとDにいきたくて……みたいな。しかも“Hellfly”って曲は、〈Heavenstampってこういうバンド〉っていうカテゴリからあえて外れたものを、と思って作った曲なんで、そこに不時着するような感じで辿り着くっていう。それで“Lost control”」