インタビュー

SIMON TAYLOR(TOMATO)が語る、改編後の“Waterfall”



Heavenstampにとって3枚目の作品となるこのEPも、過去2枚のEP同様、オリジナル曲とそのリミックスで構成された一枚となっている。今回はすべてのリミックスを英国のクリエイター集団、トマトが手掛けている。トマトと聞くと、大概の人はまずアンダーワールドのジャケットやPVを思い浮かべるだろうし、ヴィジュアル仕事の専門家と思いがちかもしれない。本作のアートワークや表題曲“Waterfall”のPVも彼らの手によるものだ。しかし、メンバーのサイモン・テイラーは音楽ユニットのジョニー・コンクエストでも活動しており、これまでに2枚のアルバムを発表していたりする。今回のリミックス3曲はそのサイモンがサウンド面の舵を取ったようで、ダンスに縛られない自由なアプローチは、まさにジョニー・コンクエストの作品群に通じるものがある。

「持ち上げて、大きく落ちる雰囲気をトラックのなかで作ってみたんだ。そうするために、声とギターに手を加えてあるよ」とサイモンが語るのは、表題曲のリミックス。原曲の骨格のみを抜き出してシンプルに仕上げつつ、ブレイクを織り込むことで緩急を付けている。マンチェ期のテリー・ファーリーの仕事あたりを想起させるざっくりとした打ち込みビートがなんとも心地良い。

そして、もっとも大胆に原曲を解体しているのが“I don't wanna die”だ。「この曲はダブに。声やギターをオリジナルから拝借して、新しいプロダクションに合わせてあるんだ」との言葉通り、性急で直情的なサウンドをディレイの海に沈めながら、徐々に強靭なダブステップへと変容させていく。前半はディープな低空飛行を維持しつつ、後半にはレイヴィーなシンセが登場。この展開には、否応なしに昂揚させられるだろう。

対して“Hellfly”の改編版では、原曲に(比較的)寄り添った解釈を施している。「オリジナルにサイケデリックの影響が読み取れたから、それをさらに押し進めてみたんだ。ドラムは60年代のガレージ・サウンド風のものを使ってある。リズム・セクションのやり取りを整えつつも、自由な感じで動かしてみたらこうなった」とのことだが、インド音楽的な要素を押し出し、逆回転のヴォーカルを浮遊させ、シンプルなドラム・ループを付与したサウンドは、さながらビートルズ“Tomorrow Never Knows”の2011年仕様といったところか。

Heavenstampの音楽について、サイモンは「彼らが西洋的なものと触れ合うことによって、影響を受けて、だんだん変化していっている様子がとても興味深いね。もっと押し進めていいと思うよ。これまでの日本のバンドの型を破るために。その可能性を持っているよ」と語る。国内シーンよりもUK勢と共振するHeavenstampのサウンド・センスを彼は買っているのだろうし、その部分の魅力を抽出&増幅させたのがこのリミックス3曲と言えるだろう。


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掲載: 2011年10月05日 18:03

更新: 2011年10月05日 18:03

文/澤田大輔