インタビュー

INTERVIEW with Heavenstamp(1)――滝を駆け上がる



続いては、メンバー4人による全曲解説。“Waterfall”の他、Sally#Cinnmon(ヴォーカル)のはすっぱな魅力が全開の“I don’t wannna die”、自身の持ち味からあえて外れることでエスニックなサイケ感を纏わせた“Hellfly”、この2曲を繋ぐインタールード“Lost control”と、理論と妄想が入り混じる4曲が具現化するまでの過程をたっぷりと語ってもらった。



滝を駆け上がる



――『Hype-E.P.+REMIXES』、メジャー・デビュー作『Stand by you E.P.+REMIXES』に続いて今回は『Waterfall-E.P.+REMIXES』という3枚目のカードを切るということで、バンド内で話したことなどはありましたか?


Tomoya.S「前回の『Stand by you E.P.+REMIXES』はメジャーからの1枚目で、すごくポップに詰めて。今回はそのあとの1枚ってことで、ディスコ・パンクっぽいカラフルな部分ではなくて、自分たちなりのシューゲイザーと、シンフォニックな要素をミックスした部分を前面に押し出した曲で攻めようっていうことを話しました」


――この曲は、もとからあったということで。メンバーの皆さんは、初めて聴いたときにどんな印象でした?


Sally#Cinnmon(ヴォーカル/ギター)「それまでのHeavenstampにない音楽性ではあったんですけど、とにかくメロディーが美しかったので、やらない理由がないよね、って(笑)」


――ラッセルさんとの対談のとき、Tomoyaさんには〈モルダウ〉を例に出して説明してもらったんですが、それは皆さんにも?


Sally「言ってたね(笑)」


Mika(ドラムス)「〈モルダウ〉を実際に歌ってたし(笑)」


Tomoya.S「メジャー(・コード)になるとことかだね、たぶん(笑)。それを説明したのかもしれない」


Mika「あと、オーケストラのようなダイナミクスがある演奏にしようって話をされたような」


Shikichin(ベース)「自分は3人よりクラシック的な要素が少なかったので、掴み取るのに苦労しましたね……」


――ロックのカタルシスとクラシックのエモーション、その爆発のさせ方を考えたとき、この“Waterfall”は後者ですよね。


Tomoya.S「そうですね」


――そこは皆さん、すぐにイメージできました?


Sally「そうですね。〈モルダウ〉って言われたの、いまのMikaの話で思い出したんですけど、そういう大きな流れ――昇り詰めていくような感じを思い描きましたし、あとリーダー(Tomoya)からは〈滝を駆け上がる〉っていうワードが出ていたので、なるほど、と。そういう勢いとエモーション、そして美しさが同居した曲なんだ、っていうイメージはすぐ湧きましたね」



エモーションの曲線



――歌詞もそこからですね。


Sally「はい。“Waterfall”っていう仮タイトルも、曲が出来た時点であったんですよね。その〈滝を駆け上がる〉っていうイメージからなんですけど、このバンドはアレンジまで決めてから歌詞をつけるので、曲に潜り込めば潜り込むほど、どんどん登り詰めるような気持ちになっていって」


――この曲は一発録りだったと思うんですけど、その〈昇り詰める感覚〉を4人で構築していくのは難しかったりしました?


Mika「私の記憶では、最初にどこがいちばんフォルテッシモで、っていう話をしたような。どこが頂点で、そこからどういうふうに展開していくかっていう細かい話を何回かしたと思う。最初やったときとはどんどん曲が変わっていったし」


Tomoya「同じパートのなかでも、より細かくなったね。昇り詰め方っていうのも、どのようにエモーショナルになっていくかっていうのも、ただ直線で伸びていくのか、曲線……反比例のグラフみたいに昇り詰めていくのか、とか、そういう意識の統一がね。曲が出来てからレコーディングまで、2年ぐらいはあったってことだよね?」


Sally「うん、大体」


Tomoya「だけど、そのレコーディングの直前でもまだ細かいところを修正し合ってるぐらいに難しい曲だったと思います。あとShikichinが言うように、例えばベースだと、フレーズをコピーしたような演奏だとそれだけのものになってしまうから、スタッカートの入れ方とかも実際に歌いながら説明したりして、ニュアンスをすごく大切にした曲ですね。他の曲以上にそういうところはあったと思います」


――その足並みを揃えるのは難しそうですが、ラッセルさんも含めて5人でのレコーディングはテイクもそんなになく?


Tomoya.S「そんなになくもないですね(笑)。でも採用されたテイクのときは、全員が演奏終わったあと、コントロール・ルームのスタッフさんも含めて〈これだ!〉っていう手応えがあって。このテイクがいちばんエモーショナルでした」


――では歌詞の話に戻りますと、言葉からはとにかく一歩踏み出そう、という決意が感じられるように思いますが……。


Sally「そうですね……この曲をもらったときに、生半可な言葉はのせられないな、っていうのがあって。私、言葉遊びが好きなので、結構それをやりたくなるんですけど、でもこの曲はダメだ、そういうんじゃない、もっと真剣に……言葉遊びをしている曲も、真剣じゃないわけじゃないんですよ? でも、もっと真摯に向き合わないとって思って、ものすごく曲に潜って。全体のイメージとしては、一歩踏み出そうっていう決意というよりは、過去なんてたいしたことないし、未来もないかもしれない。だけど、全部の希望をなくしたわけではないから、前にとにかく進むしかないなっていう、背水の陣のような(笑)の気持ちだったんだと思うんですけど」


――歌詞を書いた当時、そういうメンタリティーだった?


Sally「ん~、曲に入り込んだ結果、その気持ちが研ぎ澄まされたような感じがしますね。もしかしたら深層心理のなかに常にあるのかもしれないですけど、この曲によって引きずり出された、こういう言葉が出てきた感じがしますね」


カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2011年10月05日 18:03

更新: 2011年10月05日 18:03

インタヴュー・文/土田真弓