Heavenstamp 『Waterfall-E.P.+REMIXES』
メジャー・デビュー作となった『Stand by you E.P.+REMIXES』では自身のポップ・サイドを明確に提示してみせたHeavenstamp。あれから5か月のスパンで完成したニューEP『Waterfall-E.P.+REMIXES』では、彼らのサウンドを語るうえでのキーワードである〈ディスコ・パンク〉〈シューゲイズ〉〈シンフォニック〉のうち、あとの二つが大きくフィーチャーされている。
バンド史上もっとも壮大でエモーショナルとも言える表題曲には、これまでの作品と同じくラッセル・リサック(ブロック・パーティ)が参加。そこでbounceでは、レコーディングのタイミングで来日した彼とHeavenstampの妄想型(!?)ソングライター、Tomoya.Sとの対談を実施! さらにはメンバー4人へのインタヴューと、3曲のリミックス/アートワーク全般を手掛けたサイモン・テイラー(トマト)のコメントも交えて、本作の多面的な解体を試みたわけで……まずは〈無類のゲーム好き〉という共通点も持つ、この二人のクロストークからどうぞ。
なんだ、イケるじゃん!
ラッセル・リサック「イキマショ!」
――はい、よろしくお願いします(笑)。まず5月30日のワンマン・ライヴはお疲れさまでした。Heavenstampとラッセルさんはその日に初めて共演されましたが、いっしょに演奏してみていかがでした? Sallyさんも含めてのトリプル・ギター編成はすごく新鮮でしたが。
Tomoya.S「そうですね。今回初めて3人でやったんですけど、それぞれが絡み合うような、ホントにいい形でのトリプル・ギターの演奏ができたような気がします」
――3本のギターが打ち消し合うことなく、それぞれの役割を果たしていて。あのバランスは難しいと思うんですけども。
Tomoya.S「事前に普段やってる演奏をラッセルに聴いてもらって、すでに2本入っているギターに何を加えたらいいかを考えてきてくれて。だから、彼がすごくいいフレーズを入れてくれた、っていうことですね」
ラッセル「“Loveless”(未発表曲)っていう曲のときには3人での掛け合いもあったりして。ああいったことは僕にとっても初めてだったし、ギターを通じての会話はおもしろかった。最初はうまくいかないかなって思ったんだけど、彼らは素晴らしいミュージシャンだから、あっという間にうまくいってね。なんだ、イケるじゃん!って」
Tomoya.S「ラッセルが天才なんです。天才っていうか……天使(笑)!」
――ベタ誉めですね(笑)。あと、ライヴの最後に2人でリストバンドをアピールしてましたけど……あっ、これですか?
(2人、リストバンドを見せる)
――あとになって、わざわざアピールしてたってことは何かキャラものに違いないと思ったんですけど……ガンダムですね(笑)
Tomoya.S「はい(笑)」
ふたつ目の武器
――はは、ではこの話題は必ず載せますね(笑)。ところでラッセルさんは今回、ライヴとレコーディングを兼ねて来日されたわけですが、昨日も演奏していた“Waterfall”。セットリストでは“Stamp your feet”の次にこの曲が置かれていましたが、〈大自然のなかで演奏する〉というイメージを持った“Stamp your feet”とも通じる大きなスケール感がある曲で。
Tomoya.S「まさにそうだと思います。シンフォニックな、壮大なタイプの曲ですね。バンドを結成して半年ぐらいして作った曲なんですけど、結成当初はディスコ・パンクのような曲ばかりだったので、そこにHeavenstampなりの新しい要素、もうひとつの核になるようなもの――シンフォニックでシューゲイズな部分、このふたつ目の武器の1曲目となったのが“Waterfall”で」
――結成当初からシューゲイズな方向性を見据えていたわけではなかったんですか?
Tomoya.S「(バンド結成のきっかけとなった)2008年の〈フジロック〉からその年いっぱいはイメージを考えてるだけで実際スタジオに入ってはいなくて。そのあいだにシューゲイザー直系の曲も出来たけど、そういう曲は2009年にやっていく音楽としては適してないから外すね、って話をむしろメンバーにはしたぐらいなんですね」
――マイブラのライヴに感動してバンド結成を決意したのに?
Tomoya.S「そうですね。ホントにマイブラみたいな曲が出来てしまったりして。でもそれは違う、っていう感じでした」
――そこであえて外したシューゲイズな要素を、なぜまた持ち込もうと思ったんですか?
Tomoya.S「実際バンドを始めたあとに、例えば吹奏楽を経験している女子の二人がいたり、自分も幼い頃はクラシックで育ったりしていたというので、そこを全部ミックスして、新しいジャンルになるような曲が出来ないかな、って思ったんですね。“Waterfall”はシューゲイザーの曲かって言ったらたぶん、そうではない。でもそういう要素もある。そこをうまくミックスすることで、ようやくHeavenstampのなかにシューゲイズというものが入ってきた瞬間だったと思います。」
――Tomoyaさん、これまではかなり具体的な妄想をもとに曲を作ってらっしゃいますが、この曲に関してはどうですか?
Tomoya.S「風景としての妄想はそこまで明確に思い描いてなかったかもしれないですけど、1曲のなかですごく静かになるところとか、またそこから湧き上がってくるような感じとか、クラシック的な要素を持っている壮大で、美しい曲にしたいっていうのはありました。なおかつそこに、グルーヴを足すっていう。クラシックにはグルーヴっていう概念はないので、そこはロックの要素を入れるっていう」
――具体的に参考にしたクラシック曲ってありますか?
Tomoya.S「例えば、定番ですけど〈モルダウ〉のように、川の流れにのって景色が変わっていくような――パートごとに美しいメロディーが存在する曲にしたいっていうイメージはありました。Aメロで見える風景、サビになって見える風景、そのあとの間奏で見える世界と、どんどん進んでいくような楽曲にしたいなって。Aメロ、サビ、またAメロに戻るっていうよりも、次々と新しい景色に進んでいくっていう」
――それをメンバーの皆さんに伝えて、曲が完成して?
Tomoya.S「そうですね」
――すんなり伝わりました?
Tomoya.S「その段階では、いつものロック・フェス的な妄想もあったりするので(笑)」
――では、それもお願いします(笑)。
Tomoya.S「この曲での妄想は、〈グラストンベリー・フェスティヴァル〉に出たときに、日本の国旗を振るオーディエンスがいるぐらいの壮大な曲にしよう、っていう話をしました」
――それで伝わるんですか(笑)?
Tomoya.S「そうですね。それでだいぶ伝わります」