インタビュー

INTERVIEW(3)――いかに真面目でくだらないか



いかに真面目でくだらないか



TheBeatniks_A縦

――では、お二人はそういう自分たちが作品を発表することによって得られる承認欲求というのはどこまで意識していらっしゃいますか? 例えば、いま、音楽家はプロもアマも自由自在にインターネットなどで楽曲を発表したり、もしくはそのプロセスや断片を聴かせることもできますよね。


鈴木「ダダ漏れね(笑)」


――そうです。お二方も今回FacebookやUstreamなどで制作の過程を伝えたりなさっていました。そうやってガラス張りになっているいまの状況をどのように受け止めているのでしょうか?


高橋「Twitterなんかはプロモーション・ツールとして利用しているところはあるし、あえて遊んでるところはあるよね」


鈴木「おもしろいことはどんどん試してみようって感じ。実はアルバムに入ってる“カットアップだ! 我らの実存”の歌詞を最終日に作って歌おうと設定したんだけど、最後にあれをまさにカットアップの手法でやってみようぜってことになってね」


高橋「で、組み立てていく過程をUstreamで流しちゃおうって。そのうえで動画を記録していたので、それを後からYouTubeにアップしたんです。そういう楽しみ方はあるよね」


鈴木「そのスピードはおもしろいし、そういうやり方はすごくTHE BEATNIKSっぽいなと思うよね。でも、公開する時に、ちゃんと自分のなかで咀嚼して噛み砕いておく必要があるし、どこかでふざける気持ちも持ってる。第一、あるタイミングで僕らは〈今度のアルバムは北欧ポルノ映画のサントラ〉なんてことを言ってたくらいでね(笑)」


――それ、音楽サイトのニュースで配信されていましたよ。やはりあれはでまかせだったんですか!?


高橋「そう(笑)。モンティ・パイソンじゃないけど、そのくらいのジョークがわからないようじゃネット社会も相当な未熟だなって思うよね。例えば、pupaの時がそうだったんだけど、リハーサルの時、スタジオの壁に曲目とかを貼ったりするでしょ? それを利用して、わざと(クリームの)“Sunshine Of Your Love”って書いて貼って、その写真を公開したりね(笑)」


鈴木「結局、ネットなんてウソと本当が入り交じっているわけだからね」


高橋「うん、虚構と事実ね。そういうのって、伝統的にロックンロールにはあったわけじゃない? 思えば、そういうユーモアは最初に慶一と会ったときから共通していたね。どんだけくだらない話をするかっていうね」


鈴木「それで、よし、THE BEATNIKSやろう!って(笑)」


――そういうセンス・オブ・ユーモアは30年経過したいまのほうがより磨かれてレンジが広がった実感はありますか?


高橋「レンジは広がってますよね」


鈴木「拡散していく感覚ね。雑談のレヴェルはより高く、より低く」


高橋「慶一の持っている変態性……それってヘンな意味の変態じゃなくて、いかに真面目でくだらないかって意味なんだけど、そういうのは年々広がっているし、大きな意味を持ってきていると思う。今回のアルバムを作ってみてそれは本当に実感しましたね。例えば、僕のUstreamチャンネルに慶一にゲストで来てもらうと、くだらない話が広がりすぎちゃってね。でも、本気なんだよね。本気で遊んでる。そういう感覚は間違いなく30年前と変わらないし、むしろレンジが広がっていると思いますね。で、そういうのをどうやって表現し、発表していくかっていうと、それは結局のところ送り手の考え方次第と思う。例えば、昔はメジャー・デビューという図は明快だったじゃないですか。でも、海外なんかは顕著だけど、いまはインディーズにもいいレーベルがいっぱいあるし、アナログしか出さないってところもある。僕らもヴァイナルが好きだったりするけど、CDならCDでちゃんとパッケージをよくするような意識を考えるわけでね」


鈴木「パッケージも作品だから、日本語のタイトルと英語のタイトルを少しズラしてみたりとかね。そういうところは自分たちのやり方をちゃんと貫きたい。いくら過程をネットで見せたとしてもね。その美意識みたいなのも昔と同じなんだよね。パッケージとして出すならしっかりやり遂げる」


――ええ、お二人はフェミニズム、というかアンチ・マッチョイズムのような思想性もお持ちですよね。


高橋「(小指を立てて)こっち系のフェミニズムじゃなくて(笑)、マイノリティーみたいな感覚だよね」


――そうですね、男性なのに肉体性をひけらかさないという意識。でも、そういう思想は現在のネット社会では逆に強くて、立場逆転になったりもしますよね。


鈴木「そうだね。でも実際の労働で汗をかくのは必要だよ」


高橋「もちろんマッチョに対する憧れっていうのもあるの。昔、山本耀司さんに倣うべく慶一といっしょに空手教室に入ったこともある(笑)。空手の道着も買ってね、続かなかったけどさ。結局、それってどういうことかというと、弱者であることが本来すごくイヤでコンプレックスだってことなんだよね。でも、コンプレックスがないとモノは作れないですからね。どこかで諦めてはいるけどさ。例えば、十分な人ってあまりお洒落じゃないでしょ? ミュージシャンでも元がカッコいい人ってお洒落じゃないことが多い(笑)。まあ、加藤和彦はそうじゃなかったけど(笑)、そこからどうやってコンプレックスと戦っていくかというね」


鈴木「つらい思いをしてね」


カテゴリ : .com FLASH!

掲載: 2011年10月12日 18:02

更新: 2011年10月12日 18:02

インタヴュー・文/岡村詩野