INTERVIEW(4)――老いも楽しんで、受け入れる
老いも楽しんで、受け入れる
――まさに“ちょっとツライんだ”(87年のTHE BEATNIKSのシングル曲)。そういえば、今回のアルバムに収録されているラヴィン・スプーンフルの“Didn't Want To Have To Do It”の邦題も〈つらい僕の心〉ですね。よほど〈つらい好き〉なのかと。
高橋「それはね、偶然なんですよ(笑)。〈ラヴィン・スプーンフルの曲でどれが好き?〉って話をしていて、僕がこの曲を口ずさむと慶一が〈それはシングルのB面曲だよね〉〈そうそう、俺、B面曲好きだからね~〉なんて話になって……で、翌日にはもう僕がこの曲をレコーディングしていたという(笑)」
鈴木「で、邦題を後から知って……もうそれが決定打だった。これしかないって(笑)。つらい気持ちに耐える快感っていうのはあるのかもね。つらいな~つらいな~っていう感覚に開き直るってことかな」
高橋「僕は釣りです。一人でフライング・フィッシングしているとすごく怖くなるの。結局、そういうのって自分の心のなかの問題なんだよね。夢中になっているうちはいいんだけど、ふっと邪念が入ると山のなかで一人で……って、急に怖くなる。でも、あれは一種の快感でもあるんだよね」
――恐怖と言えば、それこそ3月の震災以降、東京を離れたミュージシャンも多くいましたよね。東京出身のお二人はその時に怖さは感じませんでしたか?
高橋「いましたよね。沖縄とかに行ったりとかね。逃げなきゃダメです、準備してあるからいつでも来てくださいってアドバイスしてくれる知り合いもいたし。でも、逃げる気はなかったですね」
鈴木「第一僕らの世代だともうせいぜいあと10年、20年くらいだしね(笑)。だから東京に居残ったよ、不安だらけだけど」
高橋「それに、ほら、僕らは我慢する力があるから(笑)。ちょっとしたことには動じないの」
――ただ、今回のアルバムのリリックには、老いや残された時間に対する畏怖のようなものがかなりシニカルに現れていますよね。
高橋「そうですね。でも、それも楽しんでるっていうか、受け入れてるんです。歳とってわかることばかりだからね、最近。30代では絶対わからなかったことがいっぱいある。歳とることも悪くないなっていうのは感じますね。老いは意識はしてるけども、ノスタルジーだけでは生きていけない、そういうことを考えることも日常なんだなって思うようになりましたね」
鈴木「そういう意識が今回の音作りにすごく左右していると思う。出てくるリフやフレーズをすごく大事にするし、ダサいものはイヤだって意識もより強くなるしね」
高橋「ダサいものを逆にデフォルメしようとしたりするしね(笑)。こういう気持ちは30代の時には働かなかったと思いますね」